技術者は生涯現役で活躍し続けてほしい――。2014年にNECグループのSI系子会社の統合で誕生したNECソリューションイノベータは、50歳以上の社員に対する処遇を大きく見直した。
NECソリューションイノベータの青木謙一人財企画部マネージャーは「統合前の各企業でも、SEの要員不足に対する課題感はあった」と話す。年代別に見た社員数は45歳~50歳が最大のボリュームゾーン。従来の50代SEは計画、スタッフなどの間接業務に移ることが多かったが、「以前のような人員配置は続けられない」(青木マネージャー)。
課題はかなり以前から認識されていたが、なかなか動けずにいた。人事制度やSEの配置計画は簡単には変えられないからだ。50代SEのあり方に対し、本格的にメスを入れ始めたのは「2012年から2013年にかけてのこと」(青木マネージャー)。バブル期に採用した世代の50代到達はもう目前だった。
人事制度も含む経営統合が完了した2015年4月、NECソリューションイノベータは「SEの生涯現役」を打ち出す社内施策を本格化させた。
50代SEのモチベーションを下げない
NECソリューションイノベータの「SEの生涯現役」を支える社内制度は大きく三つある。「活躍できる50代SEのモチベーションを下げない」(青木マネージャー)というのがコンセプトだ。
一つめは「キャリアの複線化」だ。高度な専門性を持つSEを部長や事業部長相当で待遇する「高度専門職」を創設した。組織の管理職を目指すキャリアだけでなく、専門を極めるキャリアも会社として用意する。以前は待遇を高めるには、組織の管理職になるしかなかった。
二つめは「役職定年の適用除外」である。プレイングマネジャーとして評価の高い課長は、役職定年を適用しないルールに変えた。役職定年とは、一定の年齢(NECソリューションイノベータは56歳)に達すると、管理職から外れるという制度だ。
三つめは「45歳キャリア研修」の新設だ。45歳の社員を対象に「生涯現役」を前提としたキャリアプランを考える研修を実施する。管理職も非管理職も全員が対象だ。異なる経験をしてきた同い年のSEでグループを組み、これまでやってきた仕事の振り返りとこれからやっていきたいことを話し合う。