「大事なデータが消えた」。壊れたハードディスクを前に、呆然としている暇はない。一刻も早くPCの電源を落とすのが、データ復旧へ望みをつなげるための近道だ。

 いきなりPCの電源を落とすのは、普段なら避けたい行為に属する。しかし「ファイルが読めない、OSが起動しないなどの症状があったら、電源を落とすのが初動対応の基本」(複数のデータ復旧事業者)だ。USB接続の外付けHDDなら、USBケーブルをとにかく抜いてしまう。

 データが読めなくなった場合、ファイルを構成する管理情報や本体データなどの論理的な破損と、ハードディスクを構成するヘッドの破損の大きく2種類ある。前者は、時間が経つにつれてデータ部分が上書きされる可能性が高まる。後者は、ハードウエアの破壊が進む。

ディスクの表面にうっすらと付いた傷。電源が入ったままだと破壊が進んでしまう。
ディスクの表面にうっすらと付いた傷。電源が入ったままだと破壊が進んでしまう。
(出所:アドバンスデザイン)
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誤消去した場合は「上書き」を回避

 自らの誤操作で、ファイルを消してしまった場合も同じ。OSから見れば、消したファイルのあった領域は空き領域になる。ファイルの管理情報、本で言えば「目次」が消えた状態だ。ファイルの本体が残っていても、別の目次から参照されてしまい、上書きされる可能性がある。上書きされてしまったデータを復旧するのはほぼ不可能だ。

 しかもOSやファイルシステムに関する知識が無いと、ファイルを消してしまったことに慌てる余り、すべきではない行為をしてしまう。

 その典型例が、いきなりデータ復旧ツールをダウンロードすること。ダウンロードしたファイルは、誤消去したファイルがあった領域を上書きしてしまう可能性がある。この場合も、PCの電源を落とすのが基本だ。一般に、USBメモリーや別のドライブでOSを起動し、復旧対象のドライブに書き込みが発生しないようにしてから復旧を試みる。