経済産業省と東京証券取引所が選定する「攻めのIT経営銘柄」。2015年から毎年実施しており、2017年で3回目だ。どんな企業が選ばれているのか。業種ごとに傾向はあるのか。経産省の担当者に聞いた。

(聞き手は矢口 竜太郎=日経ITイノベーターズ 兼 ITpro、斉藤 壮司=日経コンピュータ


経済産業省の滝澤豪商務情報政策局情報処理振興課長
経済産業省の滝澤豪商務情報政策局情報処理振興課長
(情報処理振興課は2017年7月5日から「情報技術利用促進課」に一部名称変更)
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2017年の「攻めのIT経営銘柄」はどのような点を重視して選定したのか。

 ITのトレンドに応じて、重きを置く評価項目を変えている。2017年度は、第4次産業革命に不可欠な、人工知能(AI)やIoT(インターネット・オブ・シングズ)、ビッグデータ、ロボットといった最新ITを新ビジネスの創出につなげている企業を高く評価して選んだ。

 ただ、大枠の選定プロセスは3年間共通している。まず、上場企業約3500社を対象にアンケート調査を実施する。2017年は382社からの回答を得た。この回答企業が選定対象となる。

 その後は2段階の評価で選定企業を決める。1次評価は、アンケートの選択式項目と過去3年間の平均ROE(自己資本利益率)に基づいたスコアリングだ。1次評価で高得点だった企業について、有識者で構成する「攻めのIT経営」委員会が2次評価し、最終決定する。

業種別に傾向はあるか。

 3年続けて来たことで、業種別でも傾向が見て取れるようになってきた。銀行業、電気機器、電気・ガス業のように、従来からIT活用に積極的な業種では“高レベル”の争いを見せている。ある企業が新しい取り組みを始めると、同業種の別の企業がすぐその動きに追従する。そのため、攻めのIT経営銘柄に選ばれる企業の入れ替わりが激しい。例えば、電気・ガス業では毎年選定される企業が異なっている。2015年は大阪ガス、2016年は東京ガス、2017年は中国電力が選ばれた。

 一方で、比較的ITの活用が遅れている業種では、選ばれる企業が固定化しつつある。食料品のアサヒグループホールディングス、繊維製品の東レなどは3年連続で選ばれた。この2社はそれぞれの業界のなかで抜きん出ている存在だ。

 2017年はレオパレス21が不動産業から初めて選ばれた。過去2年間は、不動産業からのエントリーもあったのだが、スコアが基準に達していなかった。

攻めのIT経営銘柄は収益力が高い

選定された企業に共通する特徴はあるか。

 いくつか挙げられる。まず、ITの責任者が最新技術だけでなくビジネスの動向にも精通している。社内制度やルールにも特徴がある。最新ITの活用を促すための制度が整えられている。経営層の意識にも違いがあった。例えば、セキュリティリスクを経営リスクの一つとして認識しているといった点だ。

 選ばれる企業は収益性が高いという傾向もある。選定された企業の過去3年間の平均ROEは、スコアと高い相関関係にあった。