変革テーマ 業務上の課題 施策 推進組織
新規事業のマーケティング活動の効率化 商談にいたるまでの期間が長い マーケティングオートメーション製品の導入 e戦略推進室を中心にIT部門が支援
実施時期 効果 苦労した点
2016年4月以降 業務効率を最大で10倍に向上 事業部門に対する利用促進

 デジタルカメラの普及により、写真フィルムの需要が激減。フィルム事業を主力としたビジネスモデルから脱却し、事業の多角化を進めているのが富士フイルムグループだ。ヘルスケアや高機能材料といった分野で新商品・新事業を次々と打ち出している。

 法人向けの新商品・新事業を推進してきたところ、全社的に課題になっていたのが、初期段階での人手不足だった。「通常、新事業は少人数でスタートする。人手が足りないので、見込み客(リード)のリスト獲得や顧客の育成(ナーチャリング)といった商談前のマーケティング活動に時間がかかってしまっていた」。富士フイルムホールディングスの柴田英樹経営企画部IT企画グループ グループ長はこう話す。

富士フイルムホールディングスの柴田英樹経営企画部IT企画グループ グループ長
富士フイルムホールディングスの柴田英樹経営企画部IT企画グループ グループ長
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 事業が軌道に乗れば、マーケティングのための専門組織を作ることができるが、新規事業の初期段階ではそうはいかない。そこで、「リード獲得から商談までの期間と工数を短縮するため、ITを活用することにした」(柴田グループ長)。

 マーケティング活動の効率化を実現するため、全社で共通のITシステムを構築。2016年4月以降順次、事業部門に展開した。「最も効果の出たケースでは、商談までの期間と工数を10分の1に短縮できている」と柴田グループ長は効果を語る。

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 導入したのは米マルケトのマーケティングオートメーション(MA)製品だ。2015年後半に検討を開始。ある事業で試験的に活用したところ、「人手を駆使したマーケティング活動に比べて大幅に工数を短縮できた。効果があると判断して本格導入を決めた」(柴田グループ長)。

 マルケト製品は、見込み顧客の特定から商談までのマーケティング活動を効率化・自動化するツール。見込み顧客の反応に応じて、次に採るべきコミュニケーション手段をどう変えるかをシナリオとしてあらかじめ登録しておけば、そのシナリオ通りにシステムがダイレクトメールを送ったり、広告を表示させたりする。例えば、ダイレクトメールを開封した見込み顧客に対しては、その内容とマッチした広告を表示させ、開封しなかった見込み顧客には件名や提案内容を変えた別のダイレクトメールを送る、といったことが自動でできる。

 マルケト製品の導入プロジェクトを主体的に進めたのは、富士フイルムのデジタルマーケティングを統括するe戦略推進室。加えて、グループのシステム部門である富士フイルムICTソリューションズが導入実務を担当し、柴田グループ長の所属するIT企画グループがPMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)として進行管理や課題管理を実施した。