変革テーマ | 業務上の課題 | 施策 | 推進組織 |
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介護事業のサービス品質向上と業務効率化 | 適切なタイミングで入居者をトイレに誘導することが困難 | 排尿センサーの活用 | SOMPOホールディングスの「SOMPO Digital Lab」と介護事業会社のIT部門 |
実施時期 | 効果 | 苦労した点 |
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2016年夏以降 | 失禁回数の半減など | 入居者とスタッフへの心理的な配慮 |
「デジタル技術を使い、今までなかった介護サービスを実現する」。保険大手のSOMPOホールディングスの安田誠デジタル戦略部課長はこう言い切る。
SOMPOホールディングスが介護事業に進出したのは2015年のこと。居酒屋チェーンを手掛けるワタミの介護事業会社である「ワタミの介護」を買収した。さらに、続く2016年に介護大手の「メッセージ」を傘下に収めている。買収した2社の社名をそれぞれ「SOMPOケアネクスト」「SOMPOケアメッセージ」と改め、介護事業を新たな収益の柱にする意向だ。2社合計の売上高は1108億円(2017年3月末現在)で、ニチイ学館に次ぐ業界2位の規模である。
冒頭の安田課長のコメントの通り、SOMPOホールディングスはデジタル化によって買収前よりも介護ビジネスのサービス品質と生産性を向上させることを狙う。サービス品質の向上と業務の効率化は介護業界が抱える構造的な問題。少子高齢化が進む中、介護業界は慢性的な人手不足と言われており、それがサービス品質の低下と労働環境の悪化につながっているとの指摘もある。SOMPOホールディングスの取り組みは、こうした状況を打破する挑戦といえる。
介護事業のデジタル化をけん引するのは、SOMPOホールディングスが2016年4月に設立したデジタル化専門組織「SOMPO Digital Lab」だ。成功するかどうか不明確なデジタル化案件について、事業会社とともに試行錯誤しながらアイデアを実用レベルにみがき上げるための部署である。実証実験の費用をSOMPO Digital Labが負担するため、事業会社は最初の一歩を踏み出しやすい。
介護事業会社と「SOMPO Digital Lab」が共同で進めているデジタル化プロジェクトのなかで、成果が見え始めたのが入居者の失禁を防ぐための排尿センサーの活用である。
具体的にはこんな取り組みだ。まず、膀胱(ぼうこう)内の尿の量を検知する小型の超音波センサーを入居者の腹部に取り付ける。このセンサーはいわばIoT(インターネット・オブ・シングズ)端末。尿の量データは、無線でスタッフのタブレット端末に送信される。膀胱内の尿の量があらかじめ設定したしきい値を超えると、タブレット端末のアプリが警告を発する。警告を受けたスタッフは、入居者が失禁する前のタイミングで、トイレに誘導できる。