変革テーマ | 業務上の課題 | 施策 | 推進組織 |
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土木・建築現場での作業品質と効率の向上 |
埋設物の正確な位置の特定(土木) 設置予定設備の正確な位置の特定(建築) |
AR技術を使い、埋設物や設備の正確な位置を表示 | 土木技術本部(土木) 生産技術本部(建築) |
実施時期 | 効果 | 苦労した点 |
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2015年から(土木) 2013年から(建築) |
作業指示の正確性と効率を向上 | 位置情報の測定方式の選択 |
都内の道路工事現場。リーダーらしき作業員がiPadを胸の前にかざしている。iPadの画面には内蔵カメラが写した工事現場の風景が表示されている。その風景画像は現実と1点だけ異なる部分があった。画面上の地面には実際には存在しない緑や青のラインが映っているのだ。「ここに水道管があるから注意して!」。作業員は周囲のメンバーに警告した――。
これは、清水建設が開発した「地下埋設物可視化システム」の利用シーンだ。このシステムは、AR(拡張現実)技術を使い、iPadの専用アプリ上で埋設物の位置をiPadの画面上で実写映像と重ね合わせて表示する。ユーザーからすると、あたかも地面の下を透視したように見える。利用者が立っている場所を移動したりiPadをかざす向きを変えたりすれば、重ね合わせた埋設物の画像もその動きに追従して変化する。
このシステムを利用することにより、工事現場で地面を掘る際に誤って水道管やガス管などを損傷するリスクをゼロにすることを清水建設は狙っている。「これまでも細心の注意を払って作業していたので、滅多なことで埋設物を傷つけることはなかったが、このシステムを使うことで注意すべき場所を特定することが格段に楽になった。このようなシステムは国内の建設業では初めての試みだと自負している」と清水建設の金丸清人土木技術本部開発機械部長は効果を語る。
従来は、紙の図面を基に埋設物の位置を推定していた。ARに比べると、直感的に埋設物の位置を把握することが困難で、注意を現場の作業担当者に徹底する手間がかかっていた。人材不足に悩まされている工事現場では、経験の少ない作業者でもミスを起こさないように分かりやすく指示しつつ、説明作業を効率化することが課題だった。