Javaを利用して企業システムを構築したり、Javaで構築したシステムを保守運用するうえで欠かせないポイントの一つが、米Oracleが中心となって策定するJava標準の動向を押えることだ。Java標準の策定については「開発スピードが遅く、最新の技術を取り込めていない」という批判もある。

 この点について、日本オラクルの伊藤敬氏(クラウド・テクノロジー事業統括 Fusion Middleware事業統括本部 ビジネス推進本部 担当シニアマネジャー)は、「標準であるため、互換性などを意識しながら開発しているためだ」と話す。

 Javaの標準については「開発が遅い」という意見もある一方で、企業向けシステムの場合、サーバー側のフレームワーク「Java Enterprise Edition(EE)」の後方互換性や、Java EEをサポートする商用のWebアプリケーションを採用することによる安定稼働を重視する声もある。

 実際に企業向けシステムの場合、日本オラクルの「WebLogic Server」や日本IBMの「WebSphere Application Server」など、Java EEをサポートする商用のWebアプリケーションサーバーを利用するケースが多いのも事実だ。Java標準の方向性は、Javaシステムを開発するうえで考慮すべき要素の一つといえる。

 以下では、企業向けシステム開発での中心はサーバー側のフレームワークであるJava EEと、デスクトップ向けの「Java Standard Edition(SE)」の最新動向を見ていこう。Java EEは4年振りとなる新版の「Java EE8」が2017年7月に登場予定だ。Java SEは3年振りの新版「Java SE9」が2017年9月に登場予定である。

Java SE9は、直前にリリース時期が延期に

 まずは、デスクトップ向けのJavaの新版となる「Java SE9」の動向から見ていこう。Java SE9の目玉となる機能は開発時点では「Project Jigsaw」と呼ばれていた「モジュール化」だ。「これまでJavaを開発する際には、すべてのライブラリが入っていて設定が重いことが問題だった。必要なライブラリを選択できるようになったことで、小さな環境で開発可能になった」(日本オラクルの伊藤氏)。

図3●「Java SE9」と「Java EE8」の主要なアップデート点
図3●「Java SE9」と「Java EE8」の主要なアップデート点
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 モジュール化はjarファイルの管理が簡素化されるなどのメリットがある一方で、「変更が大きく、これまでのJavaエンジニアへ影響がある」との意見が、Java標準を策定するコミュニティで出された。その結果Java SE9のリリース時期が2017年5月末、2017年7月27日から9月21日に延期になった。Java SE9の提供時期は2016年には「2017年3月」とされており、数カ月ずつ遅れている格好だ。