IoT推進ラボの地方版として2016年に全国29の地域で選定された「地方版IoT推進ラボ」。福岡県には29の地域のうち3つ、2017年に新たに選ばれた24の地域にも1つが含まれる。2017年6月21日、ICTの総合展である「Cloud Days九州」(福岡国際会議場)に、2016年に選定された福岡県、北九州市、福岡市の地方版IoT推進ラボ担当者が登壇し、それぞれの取り組み状況や課題について議論した。

福岡県IoT推進ラボ 福岡県商工部 新産業振興課 企画監 見雪和之氏
福岡県IoT推進ラボ 福岡県商工部 新産業振興課 企画監 見雪和之氏
(写真:江藤 桂輔、以下同じ)
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 「福岡県IoT推進ラボ」を主管する福岡県商工部新産業振興課企画監の見雪和之氏は、自動車産業に次ぐ基幹産業としてIoTを位置付ける。「福岡県ロボット・システム産業振興会議」や「福岡県Ruby・コンテンツビジネス振興会議」などの活動を背景に、「IoTに関連した企業が集積している」(見雪氏)ためだ。

 副知事をトップとした横断的な組織であらゆる分野からニーズの掘り起こしを進めており、既に飲酒運転防止システムや茶畑の防霜ファン故障検知システムなどを実現。2017年度はビニールハウスの環境管理システムや、乾海苔の生産支援システムなどに取り組むという。

北九州市IoT推進ラボ 北九州市 産業経済局企業支援・産学連携部 新産業振興課 新産業振興課長 山下耕太郎氏
北九州市IoT推進ラボ 北九州市 産業経済局企業支援・産学連携部 新産業振興課 新産業振興課長 山下耕太郎氏
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 「北九州市IoT推進ラボ」の主管である北九州市産業経済局企業支援・産学連携部新産業振興課課長の山下耕太郎氏は、2002年から進めてきた情報通信関連産業の集積プログラム「北九州e-PORT構想」の発展形として、IoT推進ラボの活動を位置付けていると説明する。「e-PORT構想の成果を中小企業にも広げるのが目的」(山下氏)とし、製鉄などものづくりで発展した同市の下地を踏まえ、製造業にフォーカスしたIoTの活用を図るという。

福岡市IoT推進ラボ 九州先端科学技術研究所 専務理事 副所長 オープンイノベーション・ラボ ディレクター 荒牧敬次氏
福岡市IoT推進ラボ 九州先端科学技術研究所 専務理事 副所長 オープンイノベーション・ラボ ディレクター 荒牧敬次氏
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 「福岡市IoT推進ラボ」の事務局を務める九州先端科学技術研究所専務理事副所長の荒牧敬次氏は、「福岡市IoTコンソーシアム」に7つのワーキンググループを設け、IoTの活用検討と実証実験支援を行っていると説明。具体的な支援の一つとして、2017年8月から市内を低消費電力の無線通信規格「LoRaWAN」で広域的にカバーし、IoTの実証環境を整備する。

 「一般の通信は電源確保が前提になるが、LoRaWANならばバッテリーで済み、電源を気にする必要がない」(荒牧氏)ため、環境を整えることにしたという。一方で、市全域をカバーするなかで、建物や電柱などへのセンサー設置許可が煩雑なことも指摘。「一定エリアは自由に設置できるような仕組みもほしい」と規制緩和に期待を込める。

 総合司会を務めた日経BP社イノベーションICT研究所の井出一仁 上席研究員は、「県と政令指定都市は足並みがそろわないこともあるが、この3自治体はお互い協調しており、IoT活用によるイノベーションが九州から生まれる可能性を実感した」と総括。来場者に「IoT活用のアイデアがあれば、この3自治体に提案してみると具体化するかもしれない」(井出)と呼びかけ、本セッションを起点としたオープンイノベーションの可能性を示唆した。