「事業部制をとる当社は、システムが部門ごとに作られていた。全体最適化することがクラウド移行の目的だった」。6月21日、ICTの総合展である「Cloud Days 九州 2017」(福岡国際会議場)で、TOTOの情報企画本部情報企画部ICTインフラグループ企画主査である前田和男氏が講演し、クラウドへの全面移行を目指した理由を語り、移行で得られた効果や移行のポイントについて説明した。

TOTO 情報企画本部 情報企画部 ICTインフラグループ企画主査 前田和男 氏
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TOTO 情報企画本部 情報企画部 ICTインフラグループ企画主査 前田和男 氏
(写真:江藤 桂輔)

 前田氏は部門ごとに物理サーバーが立ち上げられていたかつてのシステムについて、サーバー数が必要以上に増大していただけでなく、システム部門による十分なチェックを経ずに導入された結果、オーバースペックになっているものが多く、コストが肥大化していたと指摘する。安全対策が不十分な事業所内に置かれているサーバーもあり、危機管理面の問題もあったという。

 クラウドへの移行はこうした問題を解決するためのものだった。社内に存在する1000台以上のサーバーのうち、ファイル共有から基幹業務向けまで、80%以上をクラウドに移行すると決め、レスポンスやセキュリティ、海外展開など具体的な要件を定義して導入を始めた。

 同社はクラウドへの移行に際し、サーバーや運用方法を数種類のメニューにまとめて標準化している。サーバーはCPUやメモリーによって5段階に分け、「ユーザーが迷うことなく選択できると同時に、リソースを節約できるようにした」(前田氏)。運用方法も3つのメニューにまとめ、業務のレベルに応じたサービスを選べるようにした。

 標準化により繁雑な事務作業が軽減され、従来4~5カ月を要していたユーザーへのサーバー引き渡しは、1.5カ月までに短縮。社内に合計100台以上あったファイルサーバーは9台にまで減った。物理サーバーはベンダーがバラバラで運用方法もそれぞれ違っており、業務が属人化していたが、クラウド化によって統一されたことで「運用メンバーの多能化が進んだ」(前田氏)のも大きなメリットという。

 効果を実感した同社は、現在はCAEや3D CAD、電話のシステムでもクラウド化を進めている。CAEや3D CADはGPUの仮想化などで実現。電話は部門ごとに導入していた交換機を廃し、ベンダーが用意するIP-PBXに集約した。

 前田氏はクラウド移行を成功させるポイントとして、「地道なコスト抑制」と、これを材料にした経営層への説得を挙げる。「10年というライフサイクルで見るとコストは下がる。情報システム部門だけでなく全社的なテーマとして認識してもらうには経営層の説得が必要で、そのためにはコスト効果が確実に出ていると説明するのが有効」と強調。今後はさらなるコスト削減とともに、時間課金型のシステムやSaaS(Software as a Service)の導入なども検討していくという。