ICTの総合展である「Cloud Days 九州 2017」(福岡国際会議場)で2017年6月20日、宮崎市の潤和会記念病院を運営する潤和リハビリテーション振興財団の経営企画部IT管理室の服部正樹室長が、コミュニケーション改革のためにグーグルのSaaS(Software as a Service)型クラウドサービス「G Suite」を導入した経緯を説明した。

 社会保障費抑制などの流れを受け、徹底した業務の効率化が求められる医療分野。同病院はコストをかけずに職員間のコミュニケーションをどう高めるか、という課題にクラウドを選択した。

潤和リハビリテーション振興財団 潤和会記念病院 経営企画部 IT管理室室長 服部正樹 氏
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潤和リハビリテーション振興財団 潤和会記念病院 経営企画部 IT管理室室長 服部正樹 氏
(写真:中馬 修)

 服部氏によると、一般に医療機関は医師や放射線技師など業務独占資格者の集まりであるうえに、個々の業務空間が物理的に分かれており、情報共有が十分進んでいないところが多いという。一方で、電子カルテ導入など業務のIT活用を進めてきたものの、環境変化が激しく、システムの効果が数値に表れない。潤和会記念病院も例外ではなく、IT投資は消極的にならざるを得ず、情報共有という「次のステップに進めない状態だった」(服部氏)。

 以前には台風の直撃で同病院の一帯が浸水し、院内で管理していたサーバーが水没寸前だった経験もある。「これ以上、院内にシステムを抱えられない」(服部氏)と考えた同病院は、情報共有のためのシステムはクラウドベースにすることを決断。2010年に導入したのがG Suiteだった。

 服部氏はG Suite導入のメリットとして、料金体系がシンプルなことを挙げる。「アカウント数だけで容易にコストを算出できる」(服部氏)ためだ。すぐに使い始められる点、自らメンテナンスする必要がない点、導入以前に使っていたグループウエアのNotesからの移行が可能だったこともメリットだったという。

 エンドユーザー向けのマニュアルを用意する必要がなかったことも、服部氏は評価する。「たびたび機能が追加されるから、マニュアルはむしろ作らないほうがいい。ユーザーが多い分、使い方の情報はネットを検索してもらったほうが早い」(服部氏)。一方で、他の業務アプリとの関係でブラウザのバージョンを統一できないことや、新機能がリリースされて急にインタフェースが変わる点は、課題として認識しているという。

 ユーザーの利用促進を目的に院内のポータルサイトを開設するなど、独自の取り組みも進めている。今後は施設間や協力会社なども巻き込んだ情報共有や、IoT(インターネット・オブ・シングズ)を活用してPCがない環境でも利用できる仕組み作りを目指すという。