AR(拡張現実)の普及を左右するのが、コンテンツを楽しむデバイスの出荷台数だ。前回でも述べたように、2012年ごろからAR用ヘッド・マウント・ディスプレー(HMD)は販売されているものの、累計出荷台数はたかだか数万台、多く見積もっても10万台を超えるかどうかというレベルだろう。2016年までのVR用HMDの出荷台数である700万台に比べても、明らかに見劣りする。

主要デバイスとの出荷台数比較
主要デバイスとの出荷台数比較
(出所:VRは筆者調べ、Table/PC/MobileはGartner発表(2016年10月))
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 ただし数万台というのは「モバイルAR」を除いた数字だ。眼鏡のような形をした専用装置「ARグラス」ではなく、スマートフォンをディスプレー兼コンテンツ再生装置に使うタイプのARシステムである。

 モバイルARの応用例が「ポケモンGO」だ。地図情報とプレーヤーの位置情報を重ね合わせて、モンスターを捕獲したり現実の建物に合わせてポケストップ(アイテムを得る拠点)を設置したりする。ほかにもスマホのカメラを通して太陽系の惑星を目の前に配置して、いろいろな角度から見たり惑星の詳細な情報を閲覧したりといったものも登場している。

モバイルARの例
モバイルARの例
(出所:グーグル Project Tango)
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 ARグラスもモバイルARも、利用者が見る現実世界に仮想世界の情報やコンピュータグラフィックス(CG)を投影するという手法は同じだ。普及の可能性としては、モバイルARの方が主流になる可能性が高いと筆者は感じている。既に手元にあるスマホを、ソフトウエアの力でAR対応デバイスに変えることができるからだ。