「我々のクラウドサービスは、開発者が作りたいと思っているサービスを、作りたいと思っている方法で作れる『幅』と『深み』を提供している。これが決定的に他社のクラウドサービスと異なる点だ」。米Amazon Web Services(AWS)の親会社である米Amazon.comでCTO(最高技術責任者)を務めるバーナー・ボーガス氏は、AWSの開発者やユーザー向けの年次イベント「AWS Summit Tokyo 2017」の基調講演でこう強調した。

写真●米Amazon.comでCTO(最高技術責任者)を務めるバーナー・ボーガス氏
写真●米Amazon.comでCTO(最高技術責任者)を務めるバーナー・ボーガス氏
(撮影:渡辺 慎一郎=スタジオキャスパー)
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 ボーガス氏は「AWSは既に90以上のサービスを提供している。AWSはIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)だとの考えは古い」と話し、IoT(Internet of Things)、モバイルアプリ、オンプレミスとの連携、分析と様々なサービスを紹介した。

 ボーガス氏はAWSの利用者数について、「全世界で数百万のアクティブユーザーがおり、日本のユーザー数は1カ月10万以上」と明かし、「スタートアップから大企業までクラウドの活用が進んでいる」と評価。NTTドコモやセイコーエプソン、ファーストリテイリングなどの企業名を挙げ、「戦略としてクラウドファーストを選択するようになっている」と説明した。

AWSは開発者に「スーパーパワー」を提供する

 ボーガス氏は企業でのクラウド活用の変遷について、2014年ごろはクラウドの利用が当たり前の「ニューノーマルの時代だった」としたうえで、2015年からは「ITが企業の競合優位性を左右する時代ではなくなった」と指摘。こうした流れを踏まえ、「AWSは開発者に対し、新しいツールを相次ぎ出すことで『スーパーパワー』を提供している」と強調した。

 ボーガス氏が「AWSが開発者に提供している」とするスーパーパワーの一つが「スピード」だ。「AWSのコアサービスの一つはやはり、コンピュートサービス」(ボーガス氏)。コンピュートサービスについて、多くのメモリーを搭載したサービスに加え、GPUやFPGA(Field Programmable Gate Array)を搭載したサービスなど、用途に合わせて様々なサービスが選択できるメリットを説明した。

 特にボーガス氏が「スピード」を実現する方法として、時間を割いて紹介したのが「サーバーレス」だ。「どこで何を実行するか考えずに、コードを書くことに集中できる」とサーバーレスのメリットを説明し、イベント駆動型のコード実行環境「AWS Lambda」の利用を勧めた。アプリケーションのフローをGUIで管理する「AWS Step Functions」と組み合わせることで、「複数のLambdaの処理を組み合わせて、アプリケーションを構築できるようになる」(ボーガス氏)とした。

 もう一つサーバーレス環境に欠かせない要素として、ボーガス氏が挙げたのがNoSQLのデータベースサービス「DynamoDB」だ。2017年4月に発表したDynamoDBの高速化サービス「Amazon DynamoDB Accelerator(DAX)」などを説明し、「複雑な使い方でも一貫してパフォーマンスを出せる」とボーガス氏は説明した。