複数あるLPWA▼のうち、以下では主要な三つの規格について説明しよう。欧米で普及が先行しているSIGFOXとLoRaWAN、それに携帯電話事業者が展開するNB-IoTだ。
LPWAはいずれも、通信速度を遅くすることで、電波の到達距離を伸ばすのが基本だ。SIGFOXはさらに、二つの工夫で伝達距離を伸ばしている。仏シグフォックス アジア太平洋地区プレジデントのロズウェル・ウォルフ氏によると、「海岸など条件さえよければ、300kmくらい届いたことがある」という。
詳細な仕様については公開していないため明らかではないが、考え方としては「マッシブMIMO▼に近い」(同)という。一つの端末からの電波を複数の基地局で受信する。少なくともサービスエリア内では3局以上で受信できるように基地局を配置する。これにより、例えば「ある基地局に届いた信号の一部がノイズの陰に隠れてしまっても、ほかの基地局に届くデータから復元できる」(同)。
もう一つが「UNB▼」と呼ぶ、狭帯域の信号を使う点。その結果として、「ノイズの多い帯域でも、シンプルな処理で信号を識別しやすい」(同)と語る。日本におけるSIGFOX認証製品を最初に発表した日本テキサス・インスツルメンツ 営業・技術本部 IoTソリューションズ マネージャの酒井 正充氏は、「SIGFOXの信号スペクトルを見ると、本当に狭い帯域しか使っていない。これがSIGFOXの特徴になっている」と説明する。
Low Power Wide Areaの略。
5G(第5世代移動通信システム)で導入される、複数のアンテナを利用して通信する技術。5GではマッシブMIMOを主として電波の指向性を高める方向に使う。
Ultra Narrow Bandの略。