無線通信規格は、これまで主として高速性を追求してきた。その結果として、「遅くても遠くまで飛ぶ」という部分にぽっかり隙間ができていた。その隙間を埋めるのが、LPWA▼だ。
IoTの普及により、多数のデバイスがごく短時間通信するという動作モデルがある、ということに気付いた事業者が、LPWAに参入してきたわけだ。前述のLoRaWANやSIGFOXのほか、同じサブGHz帯▼を使う通信規格として、Wi-Fi HaLowやWi-SUNも策定されている。前者はまだ規格だけで対応する半導体デバイスなどが存在しない。逆にWi-SUNは、国内のスマートメーター向けの規格として出発したので、既に対応製品も出回っている。
これら四つの通信規格では、国内では920MHz帯を利用する。これは免許不要なISM帯▼の一つで、2012年に開放された。一方ISM帯を使う規格に対抗して、3GPP▼が策定したのがNB-IoT▼である。
遅いぶん低価格に
LPWAにはもう一つ重要な要素がある。価格である。
通信が遅くて済むのは、通信量が少ない場合だ。通信を間欠的に実施するのであれば、待ち時間のほうが長く、そのぶんまでコストがかかるようだと無駄になる。
仮にSIGFOXが想定している通信量で利用した場合、通信料金がどう変わるかを比較した結果が下の図だ。SIGFOXは、数万台契約時で1日に50回通信する場合の料金が月額換算83円。一見すると「SORACOM Air▼」の月額利用料金との差はそれほどでもないようにも見えるが、想定している台数が数万台と多いだけに、無視できない差となる。
逆に言えば、SIGFOXの利用で済むような用途に、ソラコムやNTTドコモのプランを利用するのは無駄なのだ。実際SIGFOXに合わせると、ソラコムの通信料金は月額料金301円のうち、従量課金分はわずか1円にしかならない。NTTドコモの場合には、無償利用分が大幅に余っている状況だ。
LPWAは遅いぶん消費電力も小さい。田畑など電源を敷設しにくい場所でも使える、電池で長期間駆動できるデバイスを作りやすい。
Low Power Wide Areaの略。
1GHzを切る周波数帯で、2.4GHz帯同様に免許不要で使用できる。日本では920MHz帯、欧州では863MHz、米国では915MHz帯が割り当てられている。2.4GHz帯よりも電波特性上遠くまで届きやすく、障害物を回り込みやすい。
ISMはIndustry-Science-Medicalの略。電波を無線通信以外の用途に利用するために割り当てられた周波数帯。無線通信機器は免許なしで利用できる。2.4GHz帯が有名。
3rd Generation Partnership Projectの略。携帯電話技術の標準化団体。
Narrow Band IoTの略。
ソラコムが提供するMVNOサービス。NTTドコモのLTE/CDMA網を通じて通信できる。IoT向けに特化し、キャリアよりも低価格で通信できる。