ITサービス世界2位の企業として増収を6年続けるアクセンチュア。変革に意欲的な企業のIT支援にいち早く舵を切り、事業転換した決断が吉と出た。世界一に向けて技術予測に力を入れ、付加価値が高い事業に注力する。ピエール・ナンテルム会長兼CEO(最高経営責任者)に事業戦略を聞いた。

(聞き手は大和田 尚孝=日経コンピュータ編集長)


IT世界最大手の米IBMが5年間減収に苦しんでいるのと対象的に、6年続けて増収です。ズバリ好調の理由は?

 CEOが優秀だからでしょう(笑)。冗談はさておき、理由は戦略にあります。

アクセンチュアのピエール・ナンテルム会長兼CEO
アクセンチュアのピエール・ナンテルム会長兼CEO
(撮影:Jerome Domine、以下同)
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 2011年のCEO就任時、従来型の(システム構築や運用などの)ITサービスが急速にコモディティー化していました。一方でデジタル関連のサービスが急拡大する見通しで、多額の投資や社員のスキル転換が必要でした。

 これらの変化を競合より早く認識しました。価値の高い領域に事業を転換しないと会社の将来はないとの危機感から「the New」と呼ぶ3分野に注力すると決めました。3分野とはデジタルとクラウド、情報セキュリティーです。大勢のリーダーを入れ替えて投資や買収を重ねた結果、3分野の売上高は会社全体の45%を占めるまで増えました。2020年までには売り上げの大部分を新分野が占めるようになるとみています。

競合より早く事業転換

3分野は目新しくなく、競合も注力しています。なぜうまく伸ばせたのですか。

 競合より先に始めたからです。巨額投資も決めて(2013年から)迅速にやりました。

「競合に先んじて変化を掴み、動いたことが奏功した」と語るナンテルムCEO
「競合に先んじて変化を掴み、動いたことが奏功した」と語るナンテルムCEO
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 投資先は研究開発と社員のスキル転換・強化、それから買収です。毎年継続しており、例えば2016年度の1年間で研究開発に6億4300万ドル(約700億円)、社員のスキル転換に9億4100万ドル(1000億円超)を投じました。買収には直近の上半期で8億ドル(約900億円)費やしています。投資は今後も継続し、例えば買収には年間フリーキャッシュフローの2~3割を投じます。

 当社の幹部や社員は世界中で様々な業種の顧客と深く接しており、日常的にいろいろな話が聞けます。極めて早い段階で世界的な変化に気づきました。

 研究開発部門を率いる責任者がいち早くデジタルなど新分野の重要性を認識した点も理由の一つです。研究の結果、急速な変化が訪れると2012年末までには確信し、デジタルなど新分野への大規模な事業転換を決めました。