人手不足のときに取るべき三つめのアプローチは、時間ロスの芽を摘み取ること。時間ロスの芽を摘み取るためには、現場の実態の正確な把握が欠かせない。実態を把握して初めて問題が芽の段階で気づき、手を打てる。

「ほぼ完了」や「来週までに見極める」を聞き逃さない

 参考にしたいのは、アビームコンサルティングの矢野智一氏(執行役員 プリンシパル プロセス&テクノロジー第1事業部 FMCセクター)だ。矢野氏は「実態を把握するために、メンバーから情報を聞き出すことに力を入れている」と話す。ただ聞くのではなく、正確な情報をつかむための「聞き出し方」があるという。

 矢野氏はメンバーからの報告を受ける際に、主に五つの要素が含まれていないかどうか、気を付けて聞く。(1)対策案のない現状報告、(2)曖昧表現の混入、(3)基準の変更、(4)判断の先送り、(5)伝聞の報告である(図1)。報告にこれらの要素が含まれる場合、「潜在するリスクをメンバーが認識できていないことが多く、実態を詳しく確認しないといけない」(矢野氏)。

図1●「聞き出し」が必要な五つのシーンと聞き出しのポイント
図1●「聞き出し」が必要な五つのシーンと聞き出しのポイント
メンバーの発言からリスクの種を察知。実態を正確に引き出すために質問に工夫を凝らす
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 そこで矢野氏は正確に実態を聞き出すための質問をする。例えば(1)の対策案のない現状報告は、メンバーが先を見据えた対策を打っていない可能性が高い。矢野氏はYes/Noで答えられる形式を取りながら、見通しを確認する。「今週中に終わりますか」「課題を解決する担当者は決まっていますか」といった具合だ。

 (2)の曖昧表現は、報告に重要な内容が漏れ、しかもメンバーがその重要性を認識していないことが多い。そこで、漏れた内容を確認する。「ほぼ完了しました」という報告であれば、「何が完了していないのかな?」と聞くわけだ。

 同様に(3)の基準の変更は、他の担当者のスケジュールやスコープに影響を及ぼす恐れがある。その場合、基準が変わったことを具体的に指摘した上で理由を確認する。