必須ではないタスクをうまく「手抜き」できたら、次は「早く人が育つ仕掛けを用意する」というアプローチを検討したい。NTTデータの畔柳 健氏(第二法人事業本部 第一テレコム&ユーティリティ事業部 第一統括部 第一開発担当 部長)の取り組みが参考になる。

 開発規模に見合う人数を確保できないプロジェクトでは、一人ひとりのメンバーに高い生産性が求められる。チームのリーダーであれば、高い生産性を実現するためにできるだけ精鋭をかき集めたい、と考えるかもしれない。しかし、NTTデータの畔柳氏は「優秀なメンバーばかりを集められたとしても、案外プロジェクトはうまく回らない」と話す。

実は大事な「和ませ役」や「叱られ役」

 ではどうするのか。畔柳氏はこれまでのプロジェクトマネジメントの経験から、チームに七つの役割を用意するという。具体的には、(1)まとめ役、(2)場の和ませ役、(3)切り込み隊長、(4)業務の専門家、(5)技術の専門家、(6)地道にこなす役、(7)ピンチ時の守り立て役、である(図1)

図1●人手不足のチームこそそろえたい“七人の侍”
図1●人手不足のチームこそそろえたい“七人の侍”
NTTデータの畔柳 健氏は人不足のプロジェクトにおいて、七つの役割を各メンバーにそれぞれ受け持ってもらう。7タイプのメンバーがそろっていれば、厳しい状況にあってもチームが円滑に機能しやすいという
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 つまり、映画「七人の侍」のように、各メンバーがそれぞれ違う役割を発揮するチームを作っていく。こうしたチームのほうが、「タイプが似た優秀なメンバーばかりのチームよりも、プロジェクトが円滑に進みやすい」(NTTデータの畔柳氏)。

 それぞれの役割を見てみよう。(1)は文字通り、メンバーからの意見をとりまとめる役割だ。(2)はチームの雰囲気を明るく保つことでプロジェクトを進めやすくするタイプ、(3)の切り込み隊長は、最新技術を取り入れるなど挑戦が必要な場面で力を発揮する。(4)の業務の専門家と(5)の技術の専門家も、システム開発プロジェクトでは当然必要だ。(6)の地道に仕事をこなす役も、プロジェクトを着実に進める上で欠かせない。

 (7)のピンチ時の守り立て役は、「利用部門に叱られるときに、叱られる役を積極的に引き受けるタイプ」と畔柳氏は説明する。こうしたメンバーがいないと、ピンチを迎えた際にチーム全体の雰囲気が暗くなり、立て直しに時間が掛かってしまう。「叱られてしまったよ」と笑ってすぐに立ち直るようなタイプがいれば、チーム全体への波及を抑えられるわけだ。