相次ぐ大型のシステム構築プロジェクトや、デジタルビジネスに取り組む企業の増加などの影響で、多くのIT現場で人手不足が顕著になっている。現場のリーダーたちも「人が足りない」と口をそろえる(図1)。
「20社に声をかけてもなかなか集まらない」
例えば、アビームコンサルティングの矢野智一氏(執行役員 プリンシパル プロセス&テクノロジー第1事業部 FMCセクター)は「以前は構築するシステムの対象業務を熟知したメンバーを専任担当で加えられたが、今はそれが難しい」と打ち明ける。若手のメンバーにじっくり経験を積ませるゆとりも無くなってきたという。
チームメンバーの不足を解消しようとパートナー企業に応援を要請しても、それが難しくなっている。パートナーも人手不足の状況に陥っているからだ。例えばウルシステムズの前岩浩史氏(マネジャー)は「パートナー企業に10人の応援を要請しても、最近は2、3人しか集まらないことがほとんど」と話す。SCSKの湯浅要治氏(金融システム第三事業本部 総合金融システム第三部 リース第一課長)は「大規模プロジェクトでJavaの技術者が必要になったが、20社に声を掛けてもなかなか集まらなかった」と言う。
リーダーが手を尽くし、なんとか必要な人数を確保できたときも安心できない。インテックの森下栄治氏(NSG事業部 PMグループ)らのチームは、プロジェクト計画を立てた直後に中核メンバー2人を別の大型プロジェクトの応援に出さざるを得なくなった。代役として確保できたのは経験が浅い若手1人だけ。「どうやって乗り切るか悩んだ」(森下氏)。
さらにIPAの片岡 晃氏(IT人材育成本部 イノベーション人材センター センター長)は、「量だけでなく、質の面でも不足が深刻化している」と指摘する。ユーザー企業の間ではWeb系のシステムの開発、または活用のニーズが高まっている。
しかしWeb技術を得意とするITエンジニアは、オンラインゲームなど企業情報システム以外の業界との取り合いになっており、なかなか増えない。それが質不足につながっているという。
チームは駒不足、パートナーの応援も頼れない。そんな逆境にIT現場のリーダーたちは置かれている。
効率化や成長のチャンスと捉える
このように人手不足が顕著なITの現場では、悲鳴が上がる。ただし、人手が足りないチームにもかかわらず、円滑にプロジェクトを運営するリーダーも確かにいる。そうしたリーダーたちに共通するのは、逆境をむしろ前向きに捉えていること。既存の開発プロセスを見直して効率化したり、チームメンバーの成長を促したりするチャンスに変えているのだ。