巨大な円筒形の機械が地中を掘り進める。進行方向の円盤に取り付けたカッターが回転しながら土を砕き、発生した土砂は後方に排出。掘り進めた壁面は、コンクリートで作られたブロックで固められていく。
これは、建設機械「シールド機」でトンネル工事をしている風景である。シールド機は、道路上やトンネル、地下のトンネルなどを構築するために使われる。その形状は、円筒形や直方体だ。
トンネルを掘削するシールド機の運転操作には、熟練の運転者の技が必要となる。清水建設の中谷武彦土木技術シールド本部統括部課長は、「熟練のオペレーターが個人の経験や技量に基づいて運転操作する。こうしたノウハウは簡単に身に付くものではない」と説明する。
シールド機の運転操作を間違えると、当然のことながら事故につながるリスクが高まる。例えば、シールド機の進むスピードと土砂の排出速度のバランスを考慮しないと、土砂が崩れてしまうことがある。シールド機の運転操作は自動制御されているわけではない。ベテランのオペレーターが、シールド機の速度や土砂の圧力、地質のやわらかさなどの条件を総合的に判断し、運転しているのだ。
ところが昨今、シールド機の運転技術を備えた熟練オペレーターが高齢化などに伴って、減少し始めている。
清水建設は、この課題をAI(人工知能)で解決しようとしている。シールド機の操作を、AIを搭載したソフトウエアに任せようという試みだ。「熟練の技をAIで再現できるように開発を進めている」(清水建設の中谷課長)。将来は、AIがシールド機を運転するようになるかもしれない。