1日約10カ所――。国土交通省によれば、下水道管の老朽化が原因で発生する路面の陥没事故は2015年度で年間約3300カ所あったという。単純計算すると、1日に10カ所近く、何らかの陥没事故が発生している計算だ。

 大きな陥没事故になると、周辺の交通網がまひする。それだけに解決すべき社会問題として、道路管理者である自治体は陥没事故への対応を急いでいる。

 道路が陥没する理由の一つは、古くなった下水道管の一部に穴が開いたり、管と管の接合部に隙間ができたりして、その周辺から土砂が入り込むためである。土砂が流入すると、周囲の地中に空洞が発生。その空洞が次第に大きくなると、地中の土が路面を支えきれなくなり崩れ落ちてしまう。

 陥没を未然に防ぐには、老朽化した下水道管を効率的に点検する必要がある。ところが、国内にある全ての下水道管を作業担当者が点検し、空洞を発見することは手間とコストがかさみ、容易なことではない。埋設されている下水道管全てを調べようとすると、約47万キロメートル。このうち約1万3000キロメートルの下水道管は、50年以上前に設置されたものだ。

図●50年以上前に設置された下水道管が今後増える
図●50年以上前に設置された下水道管が今後増える
出所:国土交通省
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AIを使って1カ月の作業が3日に

 老朽化した下水道管に問題はないかどうかを効率良く点検するため、AI(人工知能)を活用する企業が出てきた。地質調査を手がける川崎地質(東京・港)である。同社は路面下の空洞探査にAIの試験導入を進めており、2017年7月から本格利用を始める計画だ。

 「熟練の作業担当者でも1カ月かかっていた点検作業が、AIを使うことで3日でできるようになった」。川崎地質の沼宮内信戦略企画本部営業企画部長はこう話す。路面下の空洞探査にAIを活用した場合の作業スピードは、人間の10倍というわけだ。