東日本大震災の復興に向けて国土交通省が東北で進める道路工事の現場などで、注目を集める取り組みがある。コンクリートの「表層品質」の向上だ。専門家並みの”審美眼”を身に付けたAI(人工知能)が、その一翼を担うかもしれない。

 様々な社会インフラを形作る鉄筋コンクリートは、引っ張りに強い鉄筋と、圧縮に強いコンクリートを組み合わせた合理的な材料だ。水酸化カルシウムを含む強アルカリ性のコンクリートが鉄筋を包み込むことで、鉄筋の周囲に不動態被膜と呼ぶ安定した膜を形成し、さびの発生を防いでいる。

 ところが、ひとたびコンクリートの表層が損傷すると、こうしたバランスが崩れてしまう。コンクリートの内部に大気中の二酸化炭素や水、塩分などの劣化因子が浸入すると、化学反応によって鉄筋が腐食・膨張する。その結果、コンクリートのひび割れが進行し、さらに劣化が加速するという悪循環が起こる。

 裏返せば、コンクリートの表層を気泡やひび割れなどのない良好な状態に保つことができれば、劣化を防げる。そんな考え方に基づいて、コンクリートの見栄えを適切に評価して耐久性を高める動きが、冒頭で紹介した「表層品質」の向上なのだ。

図●国土交通省東北地方整備局が活用しているトンネル覆工コンクリートの目視評価の基準。気泡の大きさと数を基に評価する
図●国土交通省東北地方整備局が活用しているトンネル覆工コンクリートの目視評価の基準。気泡の大きさと数を基に評価する
(出所:国土交通省)
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 そこに目を付けたのが、中堅ゼネコンの日本国土開発(東京都港区)と、ITベンダーの科学情報システムズ(横浜市)。両社は共同で、コンクリートの表層品質を自動評価するシステムを開発した。タブレット端末のカメラでコンクリート表面を撮影し、AIに評価させる。

 従来は人が目視で点数を付けて評価しており、評価者の技量や気候条件などの影響を受けて結果がばらつくという問題があった。AIなら定量的な評価が可能だ。