30年前と比べて生産性があまり改善していないと指摘される建設・インフラの現場。ここに新規参入者による“産業革命”が始まった。「i-Construction(アイ・コンストラクション)」と名付けて、1年ほど前から国土交通省が旗を振る取り組みが、そのけん引役だ。AI(人工知能)、ビッグデータなど先進的なITを活用し、現状の建設・インフラの現場を超効率的なものへと変身させようというわけだ。その姿は、日本の製造業が得意とする「強い工場」作りと似ている。

 もともと建設・インフラ産業の使命は、道路や建物をはじめとする社会インフラを整備することだけでなく、雇用の確保や地域経済の下支えといった役割も担ってきた。こうした事情から、人員削減につながる施策はこれまで容易に進まなかった。ITなど先端技術を積極的に導入して飛躍的な効率化を目指す建設・インフラ産業の今の動きは、まさに革命と呼ぶにふさわしい。

 革命の転機は、2012年12月に中央自動車道の笹子トンネルで発生した天井板崩落事故にほかならない。死者9人という悲惨な事故を機に、国内の社会インフラの安全神話は崩壊。国内のトンネルや橋、道路などの老朽化が進み、その点検・管理が徹底されていないことが白日の下にさらされた。

 もちろん、インフラの維持管理はそれまでにも行われてはいた。ただし、技術開発の面で建設産業を先導してきた大手ゼネコンなどは、インフラの維持管理の領域への進出に積極的とは言い難かった。発注される業務の事業規模が小さく、受注機会も限定的だったからだ。結果として、多くの点検・管理の仕事を人手に依存する状況が続き、技術革新が十分に進まなかった。

 官民の人材や財源も限られるなかで、大量のインフラ点検という新しいミッションをどのように進めていくか――。ここで発注者の立場でもあるインフラ管理者は、先端技術の積極的な導入に課題解決を託したのだ。

 それから瞬く間に、大量の施設を効率良く、高い精度で点検するための研究・開発が動き出した。ドローンや潜水ロボット、小型センサーによる構造物監視、高度な画像解析。今や多様な先端技術が、インフラ管理者や建設会社の仕事の領域に流れ込みつつある。