技適を所管する総務省は、2014年6月、2020年の東京五輪/パラリンピックの開催を見据えたアクションプラン「SAQ2 JAPAN Project」を公表した。増加が見込まれる外国人観光客に対して、無料Wi-Fiに代表されるサービスを充実させる計画だ。

 このプランでは、(1)無料Wi-Fiの整備促進と利用円滑化、(2)国内発行SIMへの差し替え等によるスマートフォン・携帯電話利用の円滑化、(3)国際ローミング料金の低廉化、(4)「言葉の壁」をなくす「グローバルコミュニケーション計画」の4つを目標にしている。

 神戸や京都、福岡など、以前からも来日観光客が多い都市では自治体を中心に積極的に外国人観光客向けの無料Wi-Fiサービスの整備などに力を入れている。こうした動きを政府として後押ししていくのが総務省の考えだ。既に都内の地下鉄駅などにも外国人観光客向けの無料Wi-Fiサービスが始まっている。

外国人観光客向けの無料Wi-Fiサービス(左)やプリペイドSIM自販機(右)
外国人観光客向けの無料Wi-Fiサービス(左)やプリペイドSIM自販機(右)
総務省が2014年6月に打ち出した「SAQ2 JAPAN Project」により、2020年東京五輪に向けて、外国人観光客向けの無料Wi-FiサービスやプリペイドSIMの提供が始まっている。
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 来日外国人を狙った格安SIMの提供もスタートしている。2014年4月にはソネット(So-net)が、関西国際空港に外国人観光客向けのプリペイドSIMの自販機を設置して話題になった。

 2015年3月にはNTTコミュニケーションズも関西国際空港などに同様のプリペイドSIM自販機を設置した。このようなプリペイドSIMの自販機は、世界の空港では日常的に見かけるサービス。日本はむしろ後発でようやく追いついたといえる。

 一方で彼ら外国人が持ち込むスマホや携帯端末が、技適を取得しているかというと大いに疑問である。SIMを差し替えず、国際ローミングとしてモバイルネットワークを利用する分には合法であるが、日本の通信事業者のSIMカードを挿入して通信した場合は国際ローミングには当たらず、技適が無ければ違法無線局として扱われても致し方ない。Wi-Fiサービスの利用も同様で、接続する端末(スマホやパソコンなど)に技適が必要という点は変わっていない。

 つまり、技適を統括し、無線機の違法利用を抑制する立場にある総務省が、SAQ2 JAPAN Projectで外国人観光客によるスマホの違法利用を助長するような状況になっていたのだ。