竹中工務店は、本社とグループ会社で合計約1万4000人が使うメールサービスとしてOffice 365を利用している。工事現場や取引先などでの外出先で、PowerPointやExcelなどのデータを閲覧でき、担当者が事務所や本社などに戻る必要がなくなる。一方で、メール配信の遅延などの障害が発生したときに、IT部門が障害範囲を直接調査できない、といったもどかしさも感じているようだ。

 竹中工務店がOffice 365を導入開始したのは2014年3月。きっかけは、同社が推し進めてきたワークスタイル変革「竹中スマートワーク」に取り組んだこと。タブレット端末などの活用を推進して、生産性の向上を進めてきた。既にiPadを約7000台配布しているという。

竹中工務店のOffice 365利用状況と、使っていて感じた良い点、悪い点
導入時期2014年3月から約1年かけて順次導入
利用しているサービスと用途Exchange Online:メール
OneDrive for Business:個人資料のバックアップ、iPadとPC間の資料のやり取り
Yammer:社内の情報共有ツール
Skype for Business:インスタントメッセージ、利用者が連絡可能かどうかの可視化
利用人数本社、グループ会社合わせて約1万4000人
良いと感じる点Word、Excel、PowerPointなどのOfficeアプリで作成したデータをモバイル端末で閲覧できる
悪いと感じている点メールの送受信に遅れが出たことがあった
障害発生時に待つという対策しかできない
※このほかExchange Online Archivingを利用している

 外出先でもPCで作成したデータを自由に閲覧したい――。こうした要望から、竹中工務店ではクラウド型のメールサービスへの移行を決断した。

 Office 365を選んだ決め手は、実績の豊富さと使用料金の安さだったという。グループICT推進室の長妻一弘インフラ企画・整備グループ長は「社員数1万人以上の大手企業が続々と採用に踏み切っていたこともあって、有力な選択肢として考えるようになった」と話す。建設分野の同業他社が採用しているのも大きかった。「大手のゼネコンを中心に建設会社では『デファクト』といえるほど、普及している」(長妻氏)。

 利用料金については利用検討時、日本マイクロソフトが拡販施策を進めていたこともあり、一定の割引が適用されていたという。「他社製品とのコストを比較すると破格だった」と長妻氏は語る。

竹中工務店の長妻 一弘 グループICT推進室 インフラ企画・整備グループ長とインフラ企画・整備グループの竹谷啓氏
竹中工務店の長妻 一弘 グループICT推進室 インフラ企画・整備グループ長とインフラ企画・整備グループの竹谷啓氏
写真提供:竹中工務店
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ワークスタイル変革の鍵に

 Office 365の導入は、同社が推し進めるワークスタイル変革を実現する上で不可欠な取り組みだった。iPadを持っていれば、外出先でも社内で共有されているExcelやPowerPointなどで作成したデータが見られるようになる。「営業の担当者が取引先で資料を提案するのに便利だ」とグループICT推進室 インフラ企画・整備グループの竹谷啓氏は説明する。建設現場に出向く担当者なども紙で印刷した資料を持っていく必要もない。

 契約プランは「Enterprise E1」だ。E1で契約しているのは約1万3500人。残りの約500人分のアカウントは「Office 365 Enterprise E3」で契約している。E3ではiPad用のアプリで自由に編集できる。

竹中工務店東京本店
竹中工務店東京本店
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 一定料金の中でSNSなどいろいろなツールが使える点も評価している。例えば、2015年の下期から使っているYammer。約200のグループが立ち上がっており、BIM(Building Information Modeling)関連の情報交換などに利用しているという。

 簡単なメッセージのやりとりや、利用者が連絡可能かどうかなどの可視化にはSkype for Businessを使っている。Web会議を支援するツールとしての活用も検討しており、2017年7月ごろから進める予定だ。