工場設備の監視や高齢者の見守りなどに使われているIoT(インターネット・オブ・シングス)がオフィスの身近な悩みを解決し、快適な働き方につながる技術としても注目を集め始めた。IoTを活用して、オフィス設備を社員が効率的に利用できる新サービスが相次ぎ登場している。会議室やトイレの最新の空き状況がスマートフォンやPCで分かる。データ分析を通じて、設備の配置などの最適化につなげるのも狙いだ。

 昼食後にトイレに駆け込んだが、個室が空いていない。仕方なく他の階のトイレをのぞいたが満室だ。その場で待つか自席に戻るか、別の階を調べるか。でも、もう会議の時間が迫っている──。

 誰もが一度は経験したことがあるに違いない、こんな悩みを解消しようと、トイレの個室の空き状況をスマートフォンなどで確認できるシステムの開発が活発になってきた。

トイレの空き状況をスマホで確認

 東京都港区にあるソフトバンクの本社ビル。トイレを使いたい社員がまず見るのは手元のスマホやPCだ。男性トイレの個室160カ所に取り付けたセンサーを利用して使用中か空室かを判別し、専用のWebサイトに表示する。社員は同サイトで個室の空き具合を確認し、タイミングを見計らってトイレに赴く。

ソフトバンク本社ビルの男性トイレに取り付けられたドア開閉センサー
ソフトバンク本社ビルの男性トイレに取り付けられたドア開閉センサー
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 ソフトバンクがこのシステムを導入したのは2016年10月。ファシリティマネジメント部企画管理課長の市井孝典氏は「近くのトイレが満室でも『上下階に移れば空室がある』などの情報が分かるので、すぐにその場所に向かうことができる」と話す。

 導入効果について、「特に男性トイレの混雑解消に役立つ」とファシリティマネジメント部長の佐藤信秀氏は説明する。同社は当初、男女両方のトイレにセンサーを設置して効果を検証した。すると、個室を20分以上使い続けるのは男性だけだと分かった。スマホの普及もあり、個室内でじっくり過ごす人が増えているためだとみられる。

 そこで同社は個室の空き状況を見える化するだけでなく、一定時間を超え使用していたら警備員が安全確認のためにノックするなどの対策を実施した。その結果、社員による個室の占有時間は減少し、男性トイレ1カ所当たりの空き時間を1日1時間以上増やせたという。社員からも「移動の無駄やストレスが減った」との手応えを得ており、今夏以降の商用化を目指す。