「う~ん、参ったな。どうしたらいいのよ」。夕陽がまぶしい、働き方改革のプロジェクトルーム。めぐみは険しい表情で天を仰ぐ。

 ミヤタ自動車の働き方改革プロジェクト。研修所での合宿を実行しためぐみたちはようやく、プロジェクト計画やコミュニケーション計画、役割分担をメンバー同士で合意し、実質的な活動を開始できた。

 メンバーは5人。各々の役割に従って、既に動き出している。マネージャーのめぐみ(経営企画部 課長)は全体の統括と主要なステイクホルダーへの説明と巻き込み。直樹(国内マーケティング部 課長代理)はテレワークの事例収集。雪菜(人事部 主任)は人事制度の事例収集と検討。勇人(情報システム部 課長代理)はシステムの検討と整備。大五(袖ヶ浦工場 物流企画部 課長)は費用対効果の整理。勇人の提案で、PMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)の援軍も得た。

 ところが思い通りには話が進まない。まず他社の人事制度の事例が集まらない。社内の各部署がヒアリングに応じてくれない。プロジェクトが進むにつれて、様々な壁がメンバーの前に立ちはだかる。

 「課題管理をしっかりやろうぜ。プロジェクトの成功には欠かせないマネジメントだ」。勇人が急に立ち上がり、ホワイトボードを前にペンを手にした。

 「課題管理?」。めぐみと雪菜が同時に声を上げる。直樹と大五は腕組みして、黙ったままだ。

 「プロジェクトの課題管理には欠かせない、3つの『出す』があるんだ。『書き出す』『見い出す』『ひねり出す』。この3つを実践していこう」。勇人は勢いよく、ホワイトボードに3つのキーワードを書いた。