この特集も最終回となりました。若手SEの皆さんとは切っても切れないITという言葉に着目して、皆さんに最後のエールを送りたいと思います。

 IT(インフォメーションテクノロジー)のうち、「インフォメーション」という英単語を初めて「情報」と訳したのは森鴎外と言われています。それ以前にも日本軍が「情報」と訳したという記録もあるようです。

 いずれにしても、この「情報」という単語が生まれたのは明治時代です。情報化が進んだ今にして思えば、インフォメーションの訳語としてはなかなか適格だと思いませんか?

 情報という言葉は「情」+「報」の二文字から成り立っていますよね。後ろの「報」とは事実を正しく伝えることです。データなども報の一部です。

 一方の「情」とは事実に対する解釈や意味、そしてその事実に対する感情という意味があります。ネットワークやコミュニケーションツールが発達した現在ですが、「報」はうまく伝えられるけれど「情」がなかなか伝わらず、もどかしさを感じるケースも多いのではないでしょうか?

 例えば、ある集会が開かれたとします。「参加者は2000人だった」というのは「報」であり、集会の規模の事実が正しく分かります。

 ただ、これだけでは集会の様子を十分に伝えられていませんよね。「2000人が参加してすごい熱気だった!」となると、集会の様子がぐっと見えてきて、どんな集会なんだろうと関心も生まれてきます。これが「情」です。

 私たちがコンピュータやデータだけを取り扱って仕事をしていると、「報」だけに向き合ってしまいがちです。もっと人間を相手にするようにして仕事をすれば「情」の部分も伝わるようになり、本当の意味の「情報」システムが実現できます。40年間、情シスSEと社内システムに向き合ってきて、心からそう思います。

 繰り返しますが、我々SEやITに携わる技術者は、サーバーやネットワークなど機械とは否応なく接するので、得てして機械を相手に仕事をしているかのように錯覚します。でもそれでは“半分”なのです。

 若い皆さんはもっと意識的に人間を向いて仕事をし、「情」を大切にするよう心がけてください。人間同士が直接話をすることが情シスSEにとって何より大切です。

 現場に足を運び、現場で仕事をしている先輩たちと恥ずかしがらずに何でも聞いて下さい。自分の疑問や意見をぶつけ、先輩たちからあきれられたり怒られたりしながらも、それでも対話を続ければ、理解し合えるようになります。情が通じ合ってからが本当の仕事です。

 若手の皆さんが明日も生き生きと仕事に向き合えるよう、情シスSEの一先輩として、応援しています。またどこかでお会いしましょう。