システムの運用業務は地味で、開発に比べて目立たない業務のように思われがちです。これは全くの誤解で、運用はとても大切で価値のある業務といえます。

 理由はシステムの「運用」とは「システムの価値を提供し続ける業務」だからです。前回取り上げた『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(岩崎夏海著、ダイヤモンド社)で、「高校の野球部は感動を与えるための組織だ」とあったのを真似したわけではありません。私は『もしドラ』を読む前からこのように言っていました。

 システムの開発は効果を出すための「仕組み」を提供するだけです。システムは運用を開始して、初めて目的としていた「効果」を提供し始め、システムが動いている間はずっとその効果を提供し続けます。運用しつつ利用状況をモニタリングしたり、利用者の声を聞いたりして改良を加えていけば、さらに効果を高められます。

 システムの開発と運用の関係を製造業で例えてみましょう。まず製造業では工場や生産設備は工務部が作ります。実際に原料を加工し、消費者に届ける製品を生み出すという生産は製造部が担当します。

 情報システムも原材料であるデータを加工し、情報という製品を利用者に届けます。この「情報」によって様々な効果が出てくるのです。具体的には取引を正確に実行できたり、物流時間を短縮できたり、コストを削減できたり、売上高を増やせたりします。

 裏を返せば、システムが止まるとビジネスも止まる。システム運用部は製造業でいえば製造部に相当する組織と言えるでしょう。

 システムは何も変わらずに運用し続けることはありません。サーバーなどのハードウエアは4年リースで使うケースが多く、ほぼ4年おきに新機種に替わります。ソフトウエアもOSやミドルウエアのバージョンアップや技術革新の取り込みなどで、数年から10年程度で更新されるケースが多いでしょう。

 こうしたタイミングがシステムを再構築するチャンスです。再構築で盛り込む新規要件の全てを改めてヒアリングでかき集めるのは運用下手と言えるでしょう。運用している中からいくらでも新規要件が見い出せるからです。

 与えられたシステムをそのまま運用するのでなく、次の再構築に向けて改善点を探し、利用者の要望を積極的に掘り起こしたり、あるいは創造していく。こうした「攻めの運用」が欠かせません。利用者に最も近いのが運用担当者です。運用は地味でも目立たない存在でもないという事実を忘れずに、攻め続けてください。