若手SEでもシステム開発プロジェクトに参画されている方は多いと思います。今のプロジェクト管理はおおよそPMBOK(プロジェクト・マネジメント・ボディ・オブ・ナレッジ、プロジェクト管理知識体系)という世界標準のガイドラインに乗っ取って進められるのが一般的になっています。

 PMBOKはプロジェクトの立ち上げ段階で「ステークホルダー(プロジェクトの利害関係者、関与者)」を特定する作業が求めらます。例えばシステム開発プロジェクトでは。スポンサー、ユーザー、取引先、ベンダーなど多岐にわたります。

 システム部門はプロジェクトマネジャー役であるケースが多く、プロジェクトマネジャーはステークホルダーとプロジェクト期間中に関わっていきます。そのため、ステークホルダーごとに、興味を持っていることは何か、期待していることは何か、影響力はどのくらいかなどを事前に分析をしておく必要があります。でも、イメージが湧きにくいですよね。

 若手SEの皆さん、「もしドラ」という言葉を聞いたことがありますか?『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(岩崎夏海著、ダイヤモンド社)という本の略です。

 2009年に発行され、2年間で200万部以上を売り上げたベストセラーで、前田敦子さんの主演で映画にもなりましたし、NHKでアニメ版も放映されました。読んだり観たりした若手SEも多いかもしれませんね。

 内容は弱小野球部のマネージャーになった女子高生「みなみ」が、社会生態学者ピーター・ドラッカーの名著『マネジメント』を本屋で偶然手にした出会いを契機に、甲子園を目指すというものです。そのなかに、野球部の重要なステークホルダーである野球部の「顧客」を探す場面があります。ここは、実際の職場でステークホルダーを見つけるのに参考になります。

 ドラッカーの『マネジメント』には「顧客とは誰か?」という問いかけがあります。具体的には『企業の目的と使命を定義するとき、出発点は1つしかない。顧客である。顧客によって事業は定義される』(P.F.ドラッカー著、上田惇生訳、『マネジメント【エッセンシャル版】――基本と原則』、ダイヤモンド社)というものです。

 これを読んでみなみは野球部の顧客とは誰かを探し始めます。お金を払ってくれるお客さんがいるわけではないし、と戸惑っているうちにようやく気が付いてきます。

 学費を払ってくれている「親」、野球部の活動に携わってくれている「先生たち」、「高校野球連盟」も顧客かな?となります。それから全国の「高校野球ファン」、そして忘れてはいけないのは自分たち「野球部員」と顧客像がはっきりしていきます。

 ここまで来ると野球部の定義も見えてきます。野球部のするべきことは「顧客に感動を与えること」であり、野球部とは「顧客に感動を与えるための組織」だと。そして目標を「甲子園に行く」ことに定めたのです。

 この後、マーケティングに取り組み、人の強みを生かす組織を作り、野球部にイノベーションを起こし、甲子園を目指していく様子が描かれています。

 今読んでもとても面白いです。PMBOKの分厚い参考書に取り組むのもよいですが、まだ読まれていない方はぜひ読んでください。自分でも「マネジメント」をやってみたい気持ちになりますよ。