システム導入計画の策定では一般的に、システムの開発規模や工数、費用の見積もりなどを進め、開発スケジュールまで決めます。ここではいくつかのベンダーにRFP(発注依頼書)を出して、提案してもらい、提案を比較してベンダーを選定する作業が欠かせません。

 相見積もりを取ると、ベンダーそれぞれの工夫や得意分野が分かり、それに基づいた工数や期間、費用などが分かります。ただ、若手SEがどうしても分からないのは、見積もりの数字の妥当性ではないでしょうか?

 自分自身がある程度の妥当性の実感が持てないとベンダーに安心して発注できないですよね。そのためには自分自身で開発規模や工期、コストなどに“相場観”を持つ必要があります。ですが、経験の少ない若手SEにはそもそも難しいですよね。

 まずは各企業で見積もりのための標準値を持っている場合があります。その場合にはその標準値を基本にしましょう。ほかにも業界団体などが参加企業のシステム開発実績のデータを収集して、統計的に標準値を提供しているケースがあります。

 例えば、日本情報システムユーザー協会(JUAS)では毎年「ソフトウエアメトリックス調査報告書」という資料を発行しています。「見えないものは測れない」「測れないものは改善できない」という考え方の下、企業から提供してもらった開発実績のデータを統計解析して、ソフトウエアの品質やコスト、工期を評価するための基準値や、開発生産性の標準値などを提供しています。

 その一つに「標準工期(月数)=投入工数の立方根×2.5」という式があります。投入工数が1000人月の場合、この式に当てはめると標準工期が25カ月と算出されます。

 同報告書はこれ以外にも、画面数と帳票数から開発費用を求めるような統計データなどを提示します。自分自信の“相場観”を形成するために、自分自身の経験と社内で蓄積されてきた実績値、そして社外で提供されている標準値を活用してみてください。

 「このシステムは200画面のシステムだから300人月ぐらいかかるな。そうすると費用は3億円ぐらいか。開発期間は17カ月ぐらいかかりそうだな」――。システムの概算規模からこういった相場観をさっとはじき出せるようになりますよ。

 相場観と少し話が変わりますが、若手SEのうちにプログラミングもぜひ経験してください。プログラミングはベンダーに依頼するケースが多いですが、自分が経験をしていないと依頼する仕事のイメージが実感としてうまくつかめないものです。

 自分が経験していればこそ、指導・監督するする立場になった時、何が簡単にできて、何が難しいかもおおよそ大体見当が付くようになります。ソフトウエアの受け入れ検収は発注側の責任ですが、ここでも実感を持って検収できるようになるはずです。