ITで企業の業績を拡大させるミッションを持つ情報システム部門には、業務効率化の観点が欠かせません。業務効率化では一般に、「間接業務を大幅に削減して直接業務(本来業務)の比率をアップさせよう!」といったキャッチフレーズを掲げてプロジェクトを進めます。

 ここで、直接業務と間接業務ってどうやって区別するのでしょうか?立場によってある業務が直接業務になったり間接業務になったりしますので、一律な定義が難しいものです。何となく分るようで、境目がもやもやしませんか?

 次のように考えると、簡単に区別できるようになりますよ。「直接業務はなるべく多くの時間をかけたい業務で、間接業務はなるべく短時間で済ませたい業務である」。

 なるべく多くの時間をかけたい業務としては、例えば、研究開発やデータ解析、新商品開発、顧客訪問、事業企画、設備設計などでしょうか。なるべく短時間で済ませたい業務の例としては、会議資料の作成や会議そのもの、事務処理などでしょうか。

 ただ、区別は部署によって異なることに注意しましょう。事業部門では経理事務は間接業務ですが、経理部門では本来業務になります。ヒアリングをする際には「時間をかけたい業務は何ですか?」「時間をかけたくない業務は何ですか?」と聞けば、だいたいは区別できるでしょう。

 間接業務を効率化する際の目標設定は少なくとも20%以上、できれば30%以上の効率化を目指します。10%程度の効率化目標では、今までの業務のやり方を変えなくても達成できてしまうからです。

 今まで1時間かかっていた作業を10%効率化する、すなわち54分に短縮するのは比較的容易です。プロジェクトを進めるからには業務のやり方を変えないと達成できないような、大幅な改善目標を置きましょう。

 20年ほど前ですが、筆者は東レでホワイトカラー生産性向上プロジェクトに携わりました。その中の一例には旅費精算の効率化がありました。

 それまでは近距離の外出でも交通費を毎回精算していました。これを、申請があればJRと地下鉄のプリペイドカードを先に渡して、精算不要と変えました。

 性善説に拠って立つことによって報告も不要としたのです。小さな事例ですが発想の転換の事例です。