テレワークは以前、「育児や介護などで家庭を離れられない社員のための働き方」というイメージが定着していた。

 このイメージを打破し、2013年10月、「オフィスワーカーの業務生産性向上」を目的に、テレワーク制度を導入したのが、企業向け研修やコンサルティングを提供しているリクルートマネジメントソリューションズ(RMS、東京・品川)だ。本誌2016年2月号でも詳細を紹介している。

 当時の内容を振り返ろう。テレワーク制度では、全職種の社員のうち、自律的に仕事を進められる社員を対象にした「1日在宅勤務」と、営業やコンサルティングといった社外で働くことが多い社員を対象にした「直行前・直帰後勤務」の2種類を整備した。

 そのうえで「業務目標の達成は必須」「就業時間は月200時間まで」といった形で効率よくオフィスワークを進める条件を設定、運用してきた。その結果、テレワーク制度を利用する8割近くの社員が「生産性が向上した」と回答。社員の上司の9割近くが「テレワーク制度を利用する部下の生産性が向上した」と判断する成果を得ている。

 以降、現在までどのような取り組みを進めてきたのか。

 RMSの本合暁詩執行役員経営企画部部長は「長時間労働是正の動きが社会で強まり、当社の現場で忙しさが増している。もう一段の生産性向上策を講じている」と話す。2016年4月には、働き方改革に関する全社プロジェクトを社内で発足させた。

リクルートマネジメントソリューションズはテレワーク制度で成果を出す
リクルートマネジメントソリューションズはテレワーク制度で成果を出す
リクルートマネジメントソリューションズの本合暁詩執行役員経営企画部部長。2016年5月の本社オフィス移転も主導した
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BtoB企業でなぜ働き方改革?

 これまでの施策でオフィスワークの生産性向上の成果が得られている。このプロジェクトで、取り組みをさらに推し進めるには、約400人の社員が納得できる「なぜ働き方を改革するのか」という目的の設定が重要だ。

 ここで本合執行役員は悩んだ。BtoC企業であれば「働き方改革で効率よく働けるようになれば、社員のプライベートな時間が充実して、新商品や新ビジネスのアイデアが生まれやすくなる」と言いやすく、働き方改革の目的を「新しい商品やビジネスの創出」と設定しやすい。

 しかしRMSは、人事や組織の課題を抱える企業に対して研修やコンサルティングを提供するBtoB企業だ。「効率よく働いて生まれた余暇を、社員が新商品や新ビジネスの創出に使うというのは無理がある」。こう感じた本合執行役員は、何を目的に据えるのかを、プロジェクトメンバーと徹底的に議論した。