「2017年の10月には、当社の拠点内で自動運転車を走らせる。技術者たちに興味を持ってもらいたいんだ」――。ベトナムのIT最大手であるFPTコーポレーションのチュオン・ザー・ビン会長は、こう明かす。傘下のFPTソフトウェアは、オフショア開発を主軸に成長を続けており、鈍化の兆しはみられない。それでもビン会長は満足しない。デジタル事業を成長の柱に据え、ギアを上げ始めた。

 IoT(インターネット・オブ・シングズ)、ビッグデータ分析、クラウド、モバイルで構成するFPTソフトのデジタル事業は、既に売上高全体の28%を占めている。「デジタル分野で当社はインドに先行している」と、ビン会長は現状に自信をみせる。ただし、デジタルシフトの手を緩める気はない。

FPTソフトウェアの開発拠点「ホアラック・ハイテクパーク」
FPTソフトウェアの開発拠点「ホアラック・ハイテクパーク」
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 FPTソフトは2016年、自動運転のR&D(研究・開発)組織を新設した。ADAS(先進運転支援システム)の開発などを進めており、具体的な名前は明かせないとしながらも、日本や米国の自動車会社との協業を始めているという。2017年10月には、ベトナム・ハノイの開発拠点「ホアラック・ハイテクパーク」で、社員の移動などで使う自動運転車を走らせる。

 自動運転は、将来のFPTソフトを支える重要な事業の種。2020年には、年間2億ドルのビジネスに育て上げる計画だ。同時に、同社が目指す将来像を映す“シンボル”でもある。デジタル事業に注力する姿勢を示し、その発展を支える技術者を惹きつけるための象徴だ。自動運転車を拠点内で走らせるのも、社内の技術者に関心を持ってもらい、スキル変革を促す狙いがある。