瑕疵担保責任に関連する民法改正で注目しておきたいもう一つのポイントが、改正法563条で規定される「代金減額請求権」である。「ユーザー企業が追完を請求したにも関わらず追完がなされないときは、不適合の程度に応じて代金の減額を請求できる」という規定は、現行の民法には存在しない。
「追完」とは、契約に適合していない部分がある場合に、適合するよう追加で対応することである。改正法563条は、「追完がなされない場合、ユーザーが不適合の度合いに応じて委託料の減額を請求できる」と定めている。
例えば、システムの一部に不具合があったとする。開発を委託したベンダーが不具合を修正できず、ユーザー企業が自社で完成させたとする。この場合、最初に委託したITベンダーに対し、不具合のあった部分の開発費に相当する費用を委託料から減額できる、ということになる。
賠償請求などの起算点が変わる
瑕疵担保責任に関する改正で、もう一つ重要なことがある。発注者であるユーザー企業がITベンダーにプログラムの修正を求めたり、損害賠償を請求したりできる期間が大きく変わる点だ。前回の冒頭、民法改正の影響例として紹介した内容である。
現行法の瑕疵担保責任は3種類ある(表)。それぞれの請求権を行使できる期間は異なる。請負でのシステム開発委託契約の場合では、成果物の引き渡し時から1年間(民法637条)、または損害賠償を請求できるようになってから5年間(商法522条)となっている。
改正法で大きく変わるのは前者の部分だ。「成果物の引き渡し時」ではなく「不適合がある事実を知ったとき」が起点となる。改正法では、不適合を知ったときから1年以内にその旨をITベンダーに通知すれば、追完や報酬の減額、損害賠償を請求できるということになる。