自動運転と人工知能(AI)の開発で、他社との提携戦略に果敢に挑み始めたのがホンダだ。「自動運転の開発は、相当なスピード感で進む世界。今までの自動車開発と異なる」。本田技術研究所の松本宜之社長はこう危機感を募らせる。

写真●本田技術研究所の松本宜之社長。ホンダの協調戦略を推進するキーパーソンである
写真●本田技術研究所の松本宜之社長。ホンダの協調戦略を推進するキーパーソンである
[画像のクリックで拡大表示]

 ホンダは、自動運転技術の開発で先頭集団に遅れ気味だ。巻き返しの一手として選んだのが、米ウェイモとの協業の検討である。ホンダは、ウェイモと自動運転の共同研究に向けた検討を始めたことを2016年12月に発表。ウェイモは、米グーグルの親会社米アルファベットが設立した自動運転技術開発子会社。ホンダは、自社の車両にウェイモの自動運転ソフトウエアを搭載し、米国で実験する計画である。

写真●ウェイモの最高経営責任者を務めるジョン・クラフチック氏。韓国・現代自動車や米フォードで長年勤務した経験がある
写真●ウェイモの最高経営責任者を務めるジョン・クラフチック氏。韓国・現代自動車や米フォードで長年勤務した経験がある
[画像のクリックで拡大表示]

 ホンダは自動車メーカーでありながら、2足歩行ロボット「アシモ」を2000年に実用化。自動運転の基礎技術ともいえるロボット制御やAIの技術者を数多く抱えていた。

 だが、他社が自動運転の技術開発を加速させ始めた2013年ごろから、小型車「フィット」のハイブリッド車やタカタ製エアバッグでリコールが多発。既存の自動車事業の立て直しに奔走する事態に陥った。その間に、「自動運転やAIなどの先進技術開発の優先順位が結果的に下がり、遅れをとってしまった」(ホンダ関係者)。

 世界中で激しい開発競争が始まるなか、他社は先を走る。追いつくための勝負の一矢を放ったといえるのが、ウェイモとの協業に向けた検討というわけだ。