米インテルが約2兆円でモービルアイを買収――。その成否を左右するとみられるのが、インテルと独BMWとの合同プロジェクトである。

 インテル、モービルアイ、BMWの3社は2016年7月、自動運転の分野で提携することを発表。BMWは2017年1月、自社の最上級モデル「BMW 7 Series」40台にインテルの自動運転プラットフォーム「Intel GO」と、モービルアイの画像処理プロセッサ「EyeQ」を組み込み、2017年後半までに公道でテストを始めることを明らかにした。この共同実験は、インテルによるモービルアイ買収後も維持される見込みだ。

写真●Intel GOのハードウエアモジュール
写真●Intel GOのハードウエアモジュール
(出所:米インテル)
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 「2017年中にも、世界中の公道で自動運転のテストを実施する。BMWとして初となる完全自動運転車『BMW iNEXT』を2021年に投入するための大きな一歩となる」。BMWで研究開発責任者を務めるクラウス・フレーリッヒ氏はこう話す。

 インテルの自動運転プラットフォームであるIntel GOは、インテルが開発した複数のハードウエアやソフトウエアからなる。具体的には、CPU(中央演算処理装置)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウエア、地図のリアルタイム更新や遠隔操縦を可能にする5G(第5世代移動通信システム)通信モジュール、自動運転ソフトウエア開発キットなどである。

写真●Intel GOの概要
写真●Intel GOの概要
(出所:米インテル)
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 モービルアイは距離測定や車道の白線検知などの画像処理に強みを持っている。一方、歩行者やクルマなどの物体を認識する深層学習(ディープラーニング)など大量データを処理できる画像処理プロセッサの開発については、エヌビディアに比べて遅れているとされる。

 弱点を補うためモービルアイは、次世代プロセッサを開発中だ。360度カメラ映像や各種センサーの情報を処理し、物体を認識する機能を備えたプロセッサ「EyeQ5」がそうである。モービルアイは、EyeQ5を「レベル4」の実現に欠かせない基幹部品と位置づけており、その開発を急いでいる。EyeQ5試作チップの出荷時期は、2018年前半になる見通しである。レベル4とは、特定の条件下で運転をクルマに完全に委ねられる段階のことだ。