さて、前回の記事でお願いしたアクションは取れただろうか?

 え?なんの話?と思われた方へ、復習も兼ねて一言だけ。あなたが経営者なら、前回載せた診断チェックリストに照らし合わせて自社の現状を理解し、経営陣にも診断してもらうといい。

 もし経営者でなければ、その記事を経営者の目に触れるように読んでもらえるように画策しろ、一人でできなければ仲間を探せ、とにかく今すぐに行動を起こせ――という話だった。

 アクションを取れたと仮定して話は先へ進む。

 その前に、この連載のミッションを再確認しておきたい。「読者がB2Bマーケティングを導入し、実行し、結果を出せるチカラを育てること」と「経営者に読ませる」ことだった。

 いたずらに手順や方法やノウハウを教えることはしない、だから求める答えは自分で探してもらうことになる。そう、この連載は読んで何かを学ぶものではなく、読んで考え、まず行動し、失敗から学んで、また考えることで力をつけるしかなく、近道などないのだ。

売り手企業の目線を捨てて、デジタル化の本質を考える

 「デジタル化」「デジタルトランスフォーメーション」「デジタルマーケティング」――。こんな言葉が声高に叫ばれている。しかしそれらの本質をきちんと理解している経営者は少ない。

 いや、少ないどころか、ほとんどいないと言ってもいい。その本質を理解していないがために、間違ったデジタル化を推進して、無駄な投資を繰り返して、しかも全く成果につなげられていない企業が後を絶たない。

 デジタルを利用するユーザーだけでの話ではない。そのデジタル化を製品として、企業に売り込みをかける様々なシステムインテグレーターや広告代理店やコンサルティング会社も同じだ。

デジタル化を自社の都合の良い定義に書き換えて、自社のコンセプトを売り込むためにあえてデジタルマーケティングというバズワードを再定義している。

 つまり、デジタル化を理解していない売り手と買い手しかいないため、デジタル化の本質を理解して語れる人がいなくなってしまい、その本質とかけ離れた状況となってしまっている。

 デジタル化の本質とは、デジタルテクノロジーの特徴や利点ではない。それでは完全に売り手企業の目線だ。これまでさんざん企業側で売り手の目線だけで経営をしてきた方々には、それを捨てるのは至難の業であろう。そこが本質を理解する分かれ目になる。

 デジタル化の本質を見極める前に、もっと個人的な生活とデジタル化、つまりユーザー目線で追ってみることにする。

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 今日は珍しく定時に会社を出られたので、寄り道をせずに帰ることにしよう。地下鉄に飛び乗ると、自分が東京に出てきた頃と比べて、電車の中の様子は一変した。

 新聞や雑誌を片手につり革につかまる人は皆無で、誰もがスマホの画面を見つめている。ゲームをやる人、ニュースを見る人、昨夜に見損なったドラマを見ている人、あるいはソーシャルメディアのタイムラインを流し読みする中高年はFacebook、学生たちはLINE、とソーシャルメディアプラットフォームの違いはあれど、常につながっていて、誰が・いつ・どこで・何をして・どんな気持ちでいるかと感情までをシェアしている。