郵便料金計器などのメーカーである米ピツニーボウズは創業100年を迎える2020年を機に、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)主体の事業に大きく転換する。事業構造の改革で最重視するのが「デザイン思考」だ。全製品の7割にデザイン思考を取り入れ、製品投入のスピードアップと品質向上の両立を図る。改革を率いるマーク・ローテンバーグCEOが、戦略と課題を語った。


 ピツニーボウズはこれまで100年間、郵便物にスタンプを押す装置のメーカーだった。次の100年はITサービス企業に生まれ変わって活動する。

ピツニーボウズのマーク・ローテンバーグ社長兼CEO
ピツニーボウズのマーク・ローテンバーグ社長兼CEO
ピツニーボウズ入社前の27年間、米IBMに在籍。1998~2000年にアジア太平洋 地域社長、2000~2005年に米IBMの Global General Manager。2012年12月 にピツニーボウズの社長兼CEO(最高経営 責任者)に就任。(写真:村田 和聡)
[画像のクリックで拡大表示]

 GEのPredixをサービス基盤として採用した理由は三つある。GEの社内で培われてきた実績のあるアプリケーション、システム開発や運用の柔軟性、そしてGE自体がIoTやクラウドのサービスを開発する最高のパートナーであることだ。クラウドサービスを提供するIT企業は多いが、GEのPredixは既存のIT企業と比べても優れている。

1920年に初の実用化を果たした郵便料金計器の特許申請図面。ピツニーボウズの共同創業者であるアーサー・ピツニーが発明した
1920年に初の実用化を果たした郵便料金計器の特許申請図面。ピツニーボウズの共同創業者であるアーサー・ピツニーが発明した
画像提供:ピツニーボウズジャパン
[画像のクリックで拡大表示]

 ITサービス開発に必要なものは優秀な人材だ。当社はITサービスを開発するため、グローバルな開発体制を敷いている。

 インド、東欧、英国、米国、オーストラリアにそれぞれ拠点を構えている。1万4000人の従業員のうちITエンジニアは1100人。うち800人がインドの拠点に所属している。

 日本での知名度は低いかもしれないが、インドでは優れたIT企業ランキングの上位5社に入っている。現地での当社の売上高はわずかだが、IT企業としては認められていると自負している。

 郵便料金計器などのハード事業をやめるわけではない。ITを活用して、ハードにも新たな価値を提供する。