大手IT企業がここ数年の間で、社内外の人材が交流する“共創スペース”を続々と作っている。2016年だけでも5月に富士通、7月にアクセンチュア、10月にSAPジャパンが設立した。それらに先駆け、NEC、日立製作所、日本IBMといった企業も開設している。

 共創スペースを作った目的について各社は「顧客のデジタルビジネスを支援するため」と口をそろえる。

 「デジタルビジネスの新しいアイデアを生み出すためには、大企業とベンチャー、民間企業と自治体、IT技術者とデザイナーなど、様々な立場で異なるスキルを持つ人材が集まる場が必要だった」。アクセンチュアの共創スペースを統括する保科学世デジタルコンサルティング本部マネジング・ディレクターはこう話す。

 各社の共創スペースには共通点がある。まず、社内外の人材が出入りできる場所であること。アイデアソンやハッカソンのイベント会場に使われることもある。

 次に、最新技術の活用情報を手に入れられること。IoT(インターネット・オブ・シングズ)やAR(拡張現実)のデモを用意している施設や、データサイエンティストやセキュリティの専門家などが常駐しているスペースがある。

 最後に“オシャレな空間”であることだ。普段の会議室とは違う雰囲気にすることで、新しい発想を思い付きやすくしている。

 以下では、各社の共創スペースを順に見ていこう。

アクセンチュア:パッと見、秘密基地

 今回紹介する6社の共創スペースの中で、最も“オフィスらしくない”のがアクセンチュアの「アクセンチュア・デジタル・ハブ」だ。やや薄暗い照明に、デジタルサイネージが光る様子は、お酒の出てこないバー、もしくは子どものころに憧れた秘密基地のようだ。

 アクセンチュアと協業するベンチャー企業、自治体などの担当者が出入りし、個人で作業したり、プロジェクトごとに集まって打ち合わせをしたりする。2016年7月の設立以来、延べ1000弱のプロジェクトチームが利用しているという。

 アクセンチュアのデータサイエンティストやセキュリティの専門家が常駐しているのも特徴の一つ。時間が合えば、プロジェクトチームが抱える課題を質問することができる。

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出所:アクセンチュア
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出所:アクセンチュア
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アクセンチュア「アクセンチュア・デジタル・ハブ」
住所:東京都港区赤坂
開設時期:2016年7月
敷地面積:非公表
主な設備や展示内容:可動式協業エリア、サイバー攻撃対策サービスなどのデモ
利用実績:延べ1000弱のプロジェクトチームが利用