「ロボット化するには、現場の担当者が行っている業務の流れを、パソコンをどう操作しているのかというタスクレベルで詳細につかむことが重要だ」とInfoDeliverの伊藤嘉邦取締役副社長は指摘する。

InfoDeliverは現場に張り付いて業務の実態を把握
InfoDeliverは現場に張り付いて業務の実態を把握
InfoDeliverの伊藤嘉邦取締役副社長(右)と千里智傑取締役CTO。RPAの適用と並行して、人とコミュニケーションを取りながら仕事を進めるロボット「COMI」の研究も進める。ノートパソコンに接続したCOMIに話しかけると、事前設定した仕事を自動的に行う
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 2016年2月、同社が初めてロボット化した案件は、特に業務の詳細把握が必要なケースだった。対象業務は、日本のシティホテルから毎日届く100件以上の圧縮ファイルを一つひとつ、解凍して中に含まれる画像を抽出するというもの。ファイル名の変更や、管理用エクセルシートへの記入が複数回必要など手順が複雑だった。

 そこで、社内のIT部門の担当者が現場に密着。担当者の操作内容をつぶさに調べることにした。数カ月にわたり、操作手順を明確化していったという。それをロボットに設定して現場に投入。現場担当者を単純作業から解放できた。その後の案件からは複雑な業務でも2週間程度で分析できるようになったという。

 「最初の案件で、業務のどこを自動化できるのか見極めることができた。分析対象とすべき作業を早く判断できるようになり、分析プロセス全体の効率化が図れた」とInfoDeliverの千里智傑取締役CTOは話す。

リクルートコミュニケーションズはロボット化のため担当者の判断ロジックを見える化
リクルートコミュニケーションズはロボット化のため担当者の判断ロジックを見える化
RPAを使ってリクルートグループの社内業務の自動化を進めている小路聡マネジャー。2015年夏、メールマガジンのコンテンツチェックなど担当業務をRPAで自動化。2016年はじめから、グループへの適用拡大を進めている
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 「人が作業をするうえでの業務ルールや判断ロジックを洗い出すことは必要。だが全てを洗い出せないので、人との共存協業も検討すべき」と話すのは、リクルートグループで、RPAを使って社内業務の自動化を推進しているリクルートコミュニケーションズ(東京・中央)の小路聡ソリューション統括局マーケティングプロダクト推進部WEBオペレーション推進グループマネジャーだ。

 小路マネジャーは2015年夏、事業会社が発行するメールマガジンの本文に含まれる多数のURLに間違いがないかどうかの確認にRPAを適用。ロボットによる自動化を実現し、担当者の作業負担軽減を実現した。現在は、他のグループ会社へのRPAの適用に携わっている。

 ある現場で、小路マネジャーがRPAを導入しようとしたときのことだ。担当者にどんなロジックで作業を進めているかと聞いたところ、「特に判断が必要な場面はない」という回答を得た。

 それを確かめるため、小路マネジャーがその担当者のパソコン作業を隣で見学。すると担当者が処理対象のデータの内容に応じて、瞬時に異なる操作をしていることに気づいた。「判断せずにやっているのではなく、無意識に判断していることに気づかされた」と小路マネジャーは話す。その現場では、担当者が下している業務ルールを一つひとつ質問。多くの条件分岐からなる判断ロジックを見える化していった。

 このことがあってから、小路マネジャーは「人とロボットがオフィスで共存し協業していくことが重要だ」と考えるようになったという。「人は人、ロボはロボと仕事を分けずに、連携していくことを追求するべきだ」と強調する。