1週間程度までの海外旅行や海外出張なら、渡航先で旅行者用として売られている安価なプリペイドSIMカードが便利だ。通話やSMSを使った登録作業やTopUp(日本で言う「チャージ」)が不要なことが多く、端末にSIMカードを挿せばすぐ使えることが多い。ただし旅行者向けのSIMカードは、街中で売っていないこともある。確実に入手したいなら、空港で買っておいた方がよいだろう。

 2016年の秋、シンガポールに3泊4日の旅行に出かけたときにも、現地でSIMカードを購入した。シンガポールはSingTel、StarHub、M3といった大手通信キャリア(通信事業者)があり、それぞれ旅行者向けのSIMカードを販売している。

シンガポール空港の両替カウンターでSIMを購入

 このときは、チャンギ空港ターミナル1の入国審査窓口前にある両替カウンターで販売していたSIMカードを購入してみた。購入したのは、SingTelの旅行者向けプリペイドSIMカード「hi!Tourist SIM」だ。

 購入時に店員から「SIMフリーの端末を持っているか?」と聞かれ、あとはパスポートの確認があっただけ。ものの1分もかからず購入できた。支払いは現金のみだったが、それで困ることはなかった。両替カウンターだったので、日本円からシンガポールドルに両替して支払ったからである。

チャンギ空港ターミナル1の両替カウンター。ここでSIMカードを購入した
チャンギ空港ターミナル1の両替カウンター。ここでSIMカードを購入した
(撮影:田代 祥吾、以下同じ)
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 hi!Tourist SIMには、5日間で500分間の無料通話と4GBのデータ通信で15シンガポールドル(日本円で約1167円)、10日間で無制限通話と14GBのデータ通信で30シンガポールドル(同約2334円)、10日間で無料通話と50GBのデータ通信で50シンガポールドル(同約3890円)の3種類がある。

 筆者はネットしか使わず、ネットの利用も主にWebページの閲覧とメール、SNSのみで、それほど通信量は多くなだろうと予想して、一番安いものを購入した。現地に滞在した4日間で、SNSへ画像や動画を大量にアップロードしたものの、利用量は1GB程度だった。動画など大量にデータを使わなければ、5日間で4GBあれな十分だろう。

SingTelの旅行者向けプリペイドSIMカード「hi!Tourist SIM」のパッケージ。SIMカードは標準サイズだが、切れ目を選ぶことによりmicroSIMやnanoSIMカードとしても使える
SingTelの旅行者向けプリペイドSIMカード「hi!Tourist SIM」のパッケージ。SIMカードは標準サイズだが、切れ目を選ぶことによりmicroSIMやnanoSIMカードとしても使える
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APN設定さえ不要で、すぐ使えた

 現地で購入したSIMを使う場合、端末へのAPN設定が必要になることがある。これは面倒な作業だ。だがSIMフリーのiPhoneや一部のスマートフォンには、各国で売られているSIMカードのAPN設定が保存されている。APN設定があるSIMであれば、iPhoneなら挿すだけ、Androidなら一覧からAPN設定を選ぶだけでよい。

 このときはSIMフリー版のiPhone 7 Plusにhi!Tourist SIMを挿したところ、何も設定もせずに通信できた。両替カウンターの店員に窓口で「音声通話を使うなら、特定の番号に電話して登録が必要」と言われたが、通話は不要だったので試していない。

 hi!Tourist SIMはマルチサイズのSIMカードで、切り離す位置によって標準サイズ、microSIM、nanoSIMの形状を選べる。そのため、nanoSIMの形状に切り離すだけでiPhone 7 Plusに挿入できた。

 もし、購入したSIMカードの形状が自分の端末で使える形状と異なるときは、購入した窓口に伝えてみるとよい。SIMカードのトレーとカードを見せて「入らない」といったジェスチャーをすれば、言葉が通じなくても察してくれるだろう。SIMカードを販売する窓口のなかには、SIMカッターを常備していて、その場でSIMカードを切断してくれるところもある。

 iPhoneなど、SIMカードの取り外しに付属の工具やクリップが必要な場合は、持参することをお勧めしたい。販売店や販売カウンターに言えば貸してくれることもあるが、サイズが合わなかった場合や、あとから使うつもりでとりあえず買っておいた場合などは、SIMカードを挿せず使うことができなくなってしまう。

 機能登録やTopUp、APN設定が必要でもSIMカードを購入した窓口で頼めば、その場で設定してくれることが多い。頼む場合は、言語設定を現地の言語か英語に変更したおいた方がよいだろう。以前マレーシアで、スマートフォンを日本語設定のまま差し出したところ、「言葉わからない」と片言の日本語で言われ、設定してもらえなかったことがある。