米GE(ゼネラル・エレクトリック)や独シーメンスにあって、日立製作所にないものは何か。日立が大切にしていることは何か。日立の東原敏昭社長兼CEO(最高経営責任者)が本音を語った。

(聞き手は戸川 尚樹=ITpro編集長、編集は高槻 芳=日経コンピュータ)


ライバルの米GE(ゼネラル・エレクトリック)と独シーメンスの利益率は10%以上あるのに対し、日立の営業利益率は6%強です。GEやシーメンスにあって日立に不足していることは何だと見ていますか。

 収益に対する執念。我々はこの点をもっと身に付けないといけないと感じています。もちろん我々は執念を持っているわけですが、現実を見るとまだ足りないわけです。

 グローバル企業の場合、グロスマージン(売上総利益)は30%、SG&A(販管費及び一般管理費)は20%以下を目指しています。ところが、日立のグロスマージンは30%には届かず26%ぐらい。SG&Aは20%前後を行ったり来たりしています。

 グロスマージンやSG&Aをいかにして改善していくか。それで以前から、グループ横断でコスト構造を改革する「スマトラ(スマート・トランスフォーメーション・プロジェクト)」を進めているわけです。

 ただしフロント要員を強化すると、当然SG&Aの数値は上がります。その分、グロスマージンをどれくらい改善させればいいのか。BU(ビジネスユニット)ごとに、コスト構造やキャッシュフローをきっちりチェックして動いています。

日立製作所 社長兼CEO 東原敏昭氏
日立製作所 社長兼CEO 東原敏昭氏
(撮影:陶山 勉、以下同じ)
[画像のクリックで拡大表示]

 これらは精神論ではなくて、例えば「グロスマージンを改善する」というKPIを定めたとしたら、それを改善するためにやるべきことをツリー構造で明らかにします。この改善ツリーを作成して、やるべきことを一つひとつ実行する。これを徹底しようということです。

 先方(GEやシーメンスなど)の従業員は、業績次第で「来週こなくていい」と言われる可能性があるのかもしれません。同じような危機感を我々も、もう少し持たないといけないとは思います。このあたりが差として出ているのでしょうから。

 ただし日立の良さはなくしません。優れた技術・製品の開発を通じて、社会に貢献するという理念。先ほど話した原点回帰です。事業には大義や理念が大切です。これを失ったら、我々の会社はだめになります。

数字の話ばかりをするようになったら、会社はおかしくなってしまうということですか。

 そうです。著名な経営学者であるマイケル・ポーター氏が「CSV(Creating Shared Value、共通価値の創造)」というコンセプトを提唱しました。企業の利益追求と社会の課題解決を両立させようという考え方ですが、日立は1910年の創業当初から社会貢献をずっと続けてきました。