日立製作所の東原敏昭社長兼CEO(最高経営責任者)が進める改革の成果を占う上で、外せないキーワードがある。「Lumada(ルマーダ)」だ。

日立製作所の東原敏昭執行役社長兼CEO
日立製作所の東原敏昭執行役社長兼CEO
写真:陶山 勉
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 Lumadaは、鉄道や電力などの分野で利用する制御・運用技術のOT(オペレーショナルテクノロジー)と、AI(人工知能)やビッグデータ収集・分析などのITを組み合わせて、顧客にとって最適なソリューションを提供する製品・サービス群のこと。これを総して日立は、Lumadaのことを「IoTプラットフォーム」と呼ぶ。

 業種業態に関わらず様々な企業が、最新のOTとITを組み合わせて課題解決(ソリューション)できる点がLumadaの売りである。顧客企業がLumadaを使えば、機器の故障予兆診断サービスを実現したり、AIを活用したマーケティング力の強化を図ったり、コールセンターの生産性・受注率の向上を進めたりできるという。

 日立にとってLumadaは、成長を支える“本命”である。2016年4月から2019年3月(2016年度から2018年度)の3年間で1000億円を投じて開発・改良するとしている。

 ところがIoTの分野では、「インダストリアル・インターネット」を提唱する米GE(ゼネラル・エレクトリック)や、「インダストリー4.0」の中核企業である独シーメンスの勢いが目立つ。「日立はITに強く、IoT関連の製品・サービスの面でGEやシーメンスに劣っているとは思えない。だが日立よりもGEの方がIoTビジネスで成果を上げているというイメージが強い」。ある大手証券会社のアナリストはこう指摘する。

 GEはIoTプラットフォーム「Predix」を手掛けている。Predixといえば、航空機エンジンの稼働データをきめ細かく収集し、最適な運航計画に役立てるという活用事例が有名だ。GEはPredix関連事業の売上高を2020年までに150億ドル(1兆6350億円)に伸ばすと意気込む。シーメンスは、ドイツが国を挙げて推進する「インダストリー4.0」の中核企業として、その存在感を高めている。