強い会社の変革者が集まり、本気で議論する「日経ITイノベーターズ」の第1回総会(2015年11月25日開催)でオリックスの宮内義彦氏が登壇。事業変革のリスクをいかにして取るかについて語った。

 宮内氏は、リスクを取って事業を進めるよう、幹部や部下に言い聞かせているという。それでも、「優秀な幹部になるほど、リスクフリー(リスクが無い状態)になるような企画を考えがちだ」と苦笑しながら打ち明ける。さらに、こう続ける。「リスクを取るというのは、リスクフリーにすることではありません。リーダーが最も関心を持つべきは、リスクをコントロールするということです」。

オリックスの宮内義彦シニア・チェアマン
オリックスの宮内義彦シニア・チェアマン
写真:井上 裕康
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 リスクコントロールの考え方は、このようなものである。100の力のある会社が新しいことをやるとしよう。新しいことに20の力を使うか、10以内とするのかをまず決める。そして会社の実力とリスクを見ながら、どこまで損失を許容できるかをコントロールしながら進める。

 さらにイノベーティブな取り組みについては期限を定める。思い通りにいかなければ、さっと引く。ずるずるいくと、雪だるま式に損失が膨らむ。10ぐらいの損失で終わると思っていたのなら、10できっちりと止める。

「熱量の最大化」もリーダーの仕事

 「リスクをコントロールしながら、企業内の組織が一丸となって動くというのが、まさに経営である」と宮内氏は言い切る。ではイノベーションに向かってどのように経営すれば良いのだろうか。その点について宮内氏は、「経営者が組織の方向付けをきっちりとやり、経営資源の熱量を最大化すること」だと話す。

 組織の方向付けとは、イノベーティブな製品・サービスを、いつまでに、いくらの原価で、どれだけの範囲で作り上げるのかという“設計図”を社員に示すこと。組織をどちらに向かせるか、という方向を組織全体に納得させることができないと、経営の基本が揺るいでしまう。

 経営者がきっちりとした方向性を導き出すためには、何が求められるのだろうか。「一つは、ミクロの専門知識。自分の業界、自分の技術、自分のネットワークからくる非常に細かなことも含めた専門性です。もう一つは世の中の流れを見るマクロ感。これらを兼ね備えていないと、経営者として指針を出すことはできません」(宮内氏)。