強い会社の変革者が集まり、本気で議論する「日経ITイノベーターズ」。2016年7月22日開催の定例会議では、早稲田大学ビジネススクール准教授の入山章栄氏が講演。日本企業が忘れかけていることに目を向ければ、イノベーションはたやすい?

 日経ITイノベーターズが2016年7月22日に開催した定例会議で、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄准教授が講演。「知の探索」「弱い人脈」「トランザクティブメモリー」といったキーワードを用い、最新のイノベーション創出理論について語った。

 最後に入山氏は、「実は昔の日本企業の方が、今日申し上げた理論を知らず知らずのうちに取り入れていたように思います」と指摘する。その一つが、かつて製造業でよく行われていた「ヤミ研」。正規の就業時間が終わった後に、直接仕事とは関係ない研究を技術者が勝手に進めることだ。

 「ヤミ研は典型的な知の探索です。ヤミ研から作られたヒット商品は少なくありません。青色発光ダイオードもヤミ研から生まれました。ただ、最近では法令順守などの理由からヤミ研の活動は少なくなりました」(入山氏)。

早稲田大学ビジネススクールの入山章栄准教授
早稲田大学ビジネススクールの入山章栄准教授
写真:井上 裕康
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 トランザクティブメモリーの増加に必要なコミュニケーションの機会も最近は減った。「以前はたばこ部屋で、様々な部署の人が会話することも多くありましたが、喫煙者の減少によってなくなりつつあります」(入山氏)。

 入山氏はこれらの捨て去られた“日本流”の習慣に代わる仕組みが必要だと主張する。「私は法律違反をしろと言っているわけでも、喫煙を勧めているわけでもありません。ヤミ研やたばこ部屋をそのまま復活させるのではなく、時代に即した代替手段を用意すべきです」と入山氏は強調する。