強い会社の変革者が集まり、本気で議論する「日経ITイノベーターズ」。2016年7月22日開催の定例会議では、早稲田大学ビジネススクール准教授の入山章栄氏が講演した。キーワードは「弱い人脈」。

 世界の経営学者がイノベーションを起こすための理論を数多く提唱している。その理論を紹介するため入山氏は「知の探索」「弱い人脈」「トランザクティブメモリー」というキーワードを挙げた。

早稲田大学ビジネススクールの入山章栄准教授
早稲田大学ビジネススクールの入山章栄准教授
写真:井上 裕康
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 一つめのキーワードである「知の探索」は、自社の事業と一見関係なさそうな知見を多く探し出し、自社の知見と組み合わせること。しかし、知の探索は費用対効果が低く、企業はなかなか実行することができないという。その代わり、既存商品を改良するなど、既にある知見を“深掘り”する「知の深化」を優先しがちだ。 これを「競争力の罠(わな)」と呼ぶ。

 企業が競争力の罠から抜け出すには、三つの方策があるという。一つめは経営者やリーダーが個人レベルで知の探索を心掛けること。「米アップルの元CEO、スティーブ・ジョブズは典型的な“知の探索型”の経営者でした。その分、失敗も多かった」(入山氏)。一方、後継者のティム・クック氏は“知の深化型”という。「失敗は少ないものの、イノベーションは期待できないと思います」(入山氏)。