「一律の規定で残業を認めないのはいかがなものか」「二つの施策で労働時間を大幅に削減できた」――。働き方についての熱いディスカッションは続いた。強い会社の変革者が集まり、本気で議論する「日経ITイノベーターズ」が2016年9月28日に開催した定例会議での一幕だ。

 働き方改革を目指し、新しい制度やルールを制定したり、ITシステムを整備したりしても、それまで慣れ親しんだワークスタイルを変えることは一筋縄ではいかない。新しい働き方を定着させるための地道な努力が必要だ。

 新たな制度が定着したといっても、働き方改革に終わりはない。三越伊勢丹ホールディングスの中村守孝常務執行役員情報戦略本部長は、より有効な施策がないかを常に模索している。

三越伊勢丹ホールディングスの中村守孝氏
三越伊勢丹ホールディングスの中村守孝氏
写真:古立 康三
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 同社は、東洋経済新報社が発表する「女性が働きやすい会社」で2年連続の1位を獲得した企業。2016年3月まで人事部長だった中村氏は自社のこれまでの取り組みについて本音を交えてこう説明する。

 「育児・介護休業や短時間勤務など制度を充実させたことや、女性管理職の比率の高さなどをご評価いただき、2年連続で受賞できたと思っております。ですが、『本当に働きやすいのか?』と、経営トップと日々話しており、実はまだまだ課題は多いと感じています。例えば、上司がムダな資料を部下に作らせていないか。PCが一人に1台行き渡った結果、本来作らなくてもよい資料を作っていて、逆に業務効率が落ちたのではないか。こうした本質的な改革をやっていきたいと思います」(中村氏)。

 一見、効率化を進めているようで、実は非効率になっていないか。一度作った制度は本当に意味があったのか。定期的に見直すことが肝要だ。