数値を引用しながら書く原稿には人為的なミスが起こりやすい。正確さを期する必要がある箇所は人工知能(AI)が記述し、人間が文章全体を整えるーー。気象情報大手のウェザーニューズは人間と「AI記者」が役割分担して原稿を仕上げる活用方法を実践している。

 ウェザーニューズが天気予報の記事作成業務にAIを導入したのは2016年6月。同社はアナウンサーが読み上げる天気予報の原稿作成サービスを提供しており、地方局を含む全国約8割のテレビ局が採用。以前は全て人間の原稿担当者が書いていたが、現在は「降水確率」に関する記述をAIが担う。

 「降水確率です。朝6時から夕方6時まで県内各地で20%前後となっています」といった文章をAIが自動生成する。そこに、人間が気象衛星の画像や天気図を基にした「概観」などを追記して1本の原稿を完成させている。当初は人間が書いた過去1年分の原稿をAIに読み込ませ、観測地点ごとの予測値を基に、地形の違いや時間の変化などを考慮した文章を作れるようにした。

10個程度の文章候補をAIが提示

 AIの技術は深層学習より前に登場した「構造化パーセプトロン」を採用している。「深層学習ほど高度ではないが、現場からのフィードバックを基に品質を高めていく仕組みを取り入れた」(AIイノベーションセンターの萩行正嗣氏)のがウェザーニューズのシステムの特徴だ。

 具体的には、まずAIが10個程度の文章候補を人間の担当者に提示する。「午前は各地とも20%前後となっています。午後は30%です」「午前、午後ともに県内各地とも20%前後です」「朝6時から夕方6時までは30%のところが多くなっています」といった具合だ。その中から担当者が最適な文章を選ぶ。どの文章が選ばれたか学習を繰り返すことで、より高い品質の文章候補を提示できるようにしている。

AIが10個程度の文章候補を提示する
AIが10個程度の文章候補を提示する
(出所:ウェザーニューズ)
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