クラウドを導入するユーザー企業と、導入を支援するITベンダーに今、共通している悩みがある。それは「実際にハードウエアやOS、ミドルウエアを扱ってインフラを構築できるエンジニアが社内からいなくなる」ということだ。

 既にITベンダーやユーザー企業内では「実際のインフラを知らないエンジニア」が現れつつある。

 「入社した時からAWSを扱っているため、実際のサーバーやストレージなどを知らない若手のITエンジニアは実際にいる」とNTTデータの岡安一将氏(ビジネスソリューション事業本部 データセンタ&クラウドサービス事業部 開発運用統括部 クラウドインテグレーション担当 課長)は打ち明ける。同氏の所属する部署は、全社横断的にAWSやMicrosoft Azureなどのクラウド導入を支援する部署だ。それでも「ハードウエアやOSなどの知識はインフラエンジニアに必要だと考えている」(岡安氏)。

 プライベートクラウドを利用するJTも情報システム部門であるIT部に、クラウド関連の技術には強いが、実際のサーバーを触った経験がない若手がいる。「IT部門の人員は中途採用で確保しているが、クラウドを利用しているためハードウエアやOSを知らない部員も増えてきており、IT部門としての課題になっている」(日本たばこ産業 IT部次長の藪嵜 清氏)という。

クラウドでもハードの知識は必要

 各社が実際のハードウエアやOSを知っているインフラエンジニアにこだわるのは、「クラウドを利用するのであっても、ハードウエアといったインフラの知識は必要だ」と考えているからだ。

 ITベンダーにとってインフラの知識が必要な理由は大きく二つある。

 一つはクラウドを導入する際にも、サイジングや非機能要件の反映など、オンプレミスのサーバー導入時と同様の作業が必要になるからだ。

 クラウドの売り文句は、「スモールスタートが可能」なこと。一方で、ユーザー企業がクラウドを導入する際には「導入時の予算を確保するために、オンプレミスと同様のサイジングが求められる」とTISの中澤義之氏(プラットフォームサービス事業部 プラットフォームサービス第1部主査)は話す。