クラウドの導入に伴って業務が増えるのは、ITベンダーに所属するインフラ担当のエンジニアも同様だ。これまでの業務から大きく変わる点がある。

図●クラウドの導入によって、ITベンダーの担当者の業務も変わっていく
図●クラウドの導入によって、ITベンダーの担当者の業務も変わっていく
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 オンプレミスのシステムでインフラを担当するエンジニアは、特定のシステムについて将来的な利用量などを勘案しながら容量を決め、ミドルウエアなど必要な環境を設定する設計を担っていた。これが、クラウドの導入を担当すると一気に広がる。

 「クラウドの場合は、長期的な視点が重要になる。インフラを決定する段階で、運用設計までを考慮しなければならない」。新日鉄住金ソリューションズ(NSSOL)の遠藤竜也氏(ITインフラソリューション事業本部 ITサービスソリューション事業部 事業部長)はこう強調する。

導入時の運用設計比率が高まる

 NSSOLではクラウドの導入を担えるITエンジニアを育成するために、システム構築と運用をローテーションしている。運用設計業務を100とした場合、オンプレミスではインフラ導入の担当者は運用設計について40程度を担っていた。しかし、クラウドでは運用設計の業務の一部がインフラ導入の担当者に移ることから、「クラウド導入になると60~80をインフラの導入担当者が考えなければならなくなる」(NSSOL ITインフラソリューション事業本部 ITサービスソリューション事業部 ITアーキテクティンググループ エキスパート 水落大輔氏)。

 水落氏は現在、チーフアーキテクトを務めているが、Oracle DBのエンジニアや仮想化、ネットワーク、ストレージの導入などを相次ぎ担当してきた。「複数の部署を経験し、運用を意識した構築作業ができるようになった」と水落氏は振り返る。

 業務ローテーションのほかに、NSSOLはITエンジニアが長期的な視野でシステム導入について考えられるように研修も実施している。外部の研修機関に依頼し、ユーザー企業のIT部門の立場に立って3年、5年、7年といったサイクルでシステムをリプレースする際の考え方を学ぶ。

 「クラウドのようなサービスビジネスは長期間にわたって次の戦略を考える必要がある。こうした考え方を業務に反映するために、ユーザー企業の思考プロセスを疑似体験できるようにしている」(遠藤氏)。企画段階から運用計画を踏まえて提案ができるITエンジニアの育成を目指している。